前へ

次へ

チャペルの厳かな雰囲気の中行われた、佐藤千亜妃(きのこ帝国)ソロカバーライブ「VOICE2」

佐藤千亜妃 | 2017.10.03

 昨年、HAKUJU HALLで行われたソロカバーライブ『VOICE』から丁度1年。彼女の誕生日に行われた『VOICE2』の会場は、キリスト品川教会グローリア・チャペル。高い天井、左右にパイプオルガンの大きな銀色の管、背景に十字架――厳かな雰囲気の空間に身を置いていると、ライブへの期待がひたすら膨らんだ。そして流れていたBGMがフェイドアウトして暗転。皆川真人(Piano)と大城拓登(Acoustic Guitar)に続き、ステージに佐藤千亜妃が登場。温かなピアノのイントロを経て「未成年」(柴田淳)がスタートした。スタンドの先端にあるマイクを右手で握り、一心に放つ歌声に耳を傾けていると自ずと心が安らぐ。優しい肌触りでありながらも、ふとした瞬間に祈りにも似た切実さを覗かせる佐藤の歌の凄味を、このオープニングの時点で早くも強く噛み締めることができた。

「起こし頂きありがとうございます。初めての教会。チャペルは、すごく響きが良くて、リハの時から気持ちいいなと思ってやっていました。最後までみなさんにも楽しんで頂けたら嬉しいです」。挨拶を挟んで、その後も様々な曲のカバーが届けられた。瑞々しい歌声が会場の隅々にまで広がった「蝶々結び」(Aimer)、ゴスペルのように神々しく高鳴った「If I Ain’t Got You」(Alicia Keys)……彼女の背景が窺われる選曲が楽しい。そして曲の中に脈打つドラマ、感情、物語を的確に捉える表現力に息を呑まされる。「次は今日の中で一番盛り上がる曲です。この後、盛り上がる箇所はないです(笑)。よかったら手拍子してください」と観客に呼びかけ、軽快な手拍子を誘った「プライベートサーファー」(UA)も、屋外にいるかのような開放感を漂わせていた。

「今日で実は29歳になりました。去年も誕生日に『VOICE』を企画して、楽しかったんですけど、誕生日にむりやりお祝いさせているような気分にもなってしまって(笑)。今年はずらしてやろうかなと思っていたんですけど、マネージャーさんにそう言ったら“もう会場を予約してしまいました”と。29歳になって初のライブ、頑張って歌います。生温かく見守ってください(笑)」、どことなく緊張している様子でありながらもウィットに富んでいたMCを経て、歌声が伸び伸びと煌めく素敵な時間が続いた。「木欄の涙」(スターダスト・レビュー)、「I LOVE YOU」(尾崎豊)、「恋の予感」(安全地帯)……ステージの横から放たれた照明が、背景に幻想的な影と光の筋を浮かび上がらせた「翳りゆく部屋」(荒井由実)は、この曲の世界を美しく表現していた。

 そして再び迎えたインターバルは、とてもリラックスしたムードであった。「今回は前回の選曲よりも渋いねと言われています。チャペルですけど、談笑してくれてもいいですよ(笑)。そうだ! 盛り上がる秘策を持ってきたんだ。質問コーナーみたいなのを、サポートのメンバーさんにやろうって考えてきたんです」と言い、佐藤が皆川にした質問は「今日の朝ご飯は?」。「その質問をするっていう噂を前から聞いていました(笑)。今日は餃子を朝から焼きました。なんか食べ物がなくて。パンもヨーグルトもなくて」(皆川)。続いて、大城への質問は「夕飯は何を食べる予定?」。「打ち上げがあると思って、何も予定していなかったです(笑)」(大城)……歌っている時の圧倒的な存在感から一転。実にほのぼのとしたトークを展開した佐藤は、「ライブ後に何を食べるんですか?」と逆に大城に訊かれ、「私はお酒を10杯飲もうかと。今月は今日のためにずっと禁酒していたんですよ。お酒は弱いんですけど、29歳になったので飲もうと思います」と回答して観客を和ませていた。

「しるし」(Mr.Children)からスタートした後半は、「レム」(BUMP OF CHICKEN)、「ハンキーパンキー」(ハナレグミ)、「素直」(チャットモンチー)……日本のロックバンドの曲の数々を披露。そして「今年も好きな曲を歌って、29歳を迎えることができて、とても幸せな時間でした」と言い、本編の最後に歌ったのは「to U」(Salyu)。頭上からのピンスポットを浴びながらハンドマイクで雄大に歌声を響かせた佐藤の姿が眩しかった。アウトロの演奏が続く中、深々とお辞儀をしてステージを後にした彼女を、大きな拍手が見送った。

 アンコールを求める手拍子に応えてステージに戻ってきた佐藤、皆川、大城。客席を背景にして記念撮影をした後、アンコールで披露する曲について佐藤は語った。「迷ったんですけど、せっかくなので、メンバーも観に来てくれていることですし、きのこ帝国の曲をやろうと思います」。まず披露された「ハッカ」(きのこ帝国)は、ピアノとアコースティックギターで彩ったアレンジが新鮮だった。そして「曲を知っていたら一緒に歌ってください」という言葉と共にスタートした「名前を呼んで」(きのこ帝国)がラストを飾った。途中で片手を耳に添えて、「歌のプレゼントということで、よろしくお願いします」と呼びかけた佐藤。すると柔らかな手拍子が起こり、瞬く間に一体感に包まれた会場内。たくさんの人々から届けられた歌声がチャペルを穏やかに震わせていたのが、とても感動的だった。歌い終えた後、佐藤は皆川と大城と並んで深々とお辞儀。客席から届けられた鳴り止まない拍手は、彼女のかけがえのない歌声を心から讃えていた。

【取材・文:田中 大】
【撮影:Viola Kam (V’z Twinkle)】

tag一覧 J-POP ライブ 女性ボーカル 佐藤千亜妃

リリース情報

愛のゆくえ

愛のゆくえ

2016年11月02日

ユニバーサルミュージック

01.愛のゆくえ
02.LAST DANCE
03.MOON WALK
04.Landscape
05.夏の影
06.雨上がり
07.畦道で
08.死がふたりをわかつまで
09.クライベイビー

セットリスト

佐藤千亜妃ソロカバーライブ「VOICE2」
2017.9.20@キリスト品川教会グローリア・チャペル

  1. 01.未成年 /柴田淳
  2. 02.蝶々結び /Aimer
  3. 03.If I Ain’t Got You /Alicia Keys
  4. 04.プライベートサーファー /UA
  5. 05.木蘭の涙 /スターダスト・レビュー
  6. 06.I LOVE YOU /尾崎豊
  7. 07.恋の予感 /安全地帯
  8. 08.翳りゆく部屋 /荒井由実
  9. 09.しるし /Mr.Children
  10. 10.レム /BUMP OF CHICKEN
  11. 11.ハンキーパンキー /ハナレグミ
  12. 12.素直 /チャットモンチー
  13. 13.to U /Salyu
 ENCORE
  1. ハッカ /きのこ帝国
  2. 名前を呼んで /きのこ帝国

お知らせ

■ライブ情報

きのこ帝国
きのこ帝国結成10周年ツアー
「夢みる頃を過ぎても」

2017/10/20(金) 高松 MONSTER
2017/10/22(日) 金沢 AZ
2018/03/23(金) 広島 セカンド・クラッチ
2018/03/24(土) 福岡 DRUM Be-1
2018/04/01(日) 東京 新木場STUDIO COAST
2018/04/08(日) 仙台 darwin
2018/04/14(土) 大阪 BIGCAT
2018/04/15(日) 名古屋 BOTTOM LINE
2018/04/20(金) 札幌 cube garden

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る