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androp Aimerとの共演も実現した、5年ぶりとなるホールツアーのファイナルをレポート

androp | 2018.06.12

 ホールという環境と座席スタイルの性質上、ステージと自分の観覧位置の間合いは終始変わることはなかった。しかし、ことその「距離感」に関しては違っていた。不変なはずのその間が、時に身近に、時に孤高に、時には重なり、引き寄せたり、逆に惹き寄せられたりと、曲毎に様々な「距離」を感じさせてくれたのだ。

 andropが全国ホールツアーを行った。今春発売のニューアルバム『cocoon』と共に回った今回。ホールツアーとしては実に5年ぶりであった。が故に、ホールならではの演出や趣向、はたまたニューアルバムで注入された新機軸たちが、ホールでどのように作用し映えるのか? それらに想いを募らせ、最終日のパシフィコ横浜国立大ホールに臨んだ。

 薄くスモークが漂う、ややひんやりとした場内に流れていた会場BGM代わりのグリッチ音。それが暗転と共に止み、ステージ後方スクリーンに光の輪が写し出され拡大していく。それが白色をバックにまるで繭の中にいるような、そんな照明に客席全体が包まれ始めたその時、メンバーがゆっくりとステージに登場。強烈な白色のバックライトがステージをホワイトアウトさせ、その中から、ゆっくりと生気を取り戻していくように、フロアタムを交えた伊藤彬彦のドラミングが現われる。そこに佐藤拓也のギターと前田恭介のベースが加わり、徐々に体温を帯びていくようにニューアルバム1曲目の「Prism」が形作られていく。“例えどんな未来が待っていようが構わない。さぁ、一緒に行こう”と、歌を通し誘うボーカル&ギターの内澤崇仁の歌声が力強い。間髪置かず「Voice」に入ると同曲のリズムに合わせ会場中からクラップが起こる。歌われる♪今 君は君で在るから 何したっていいんだよ》《君がいる世界なら もうずっと離れないから》に乗せ、彼らがぐっと近づいてくる。逆に内澤のギターボーカルから入った「Arigato」では、ステージへと引き寄せられる感覚をおぼえた。《さあ進もう進もう 思いっきり笑おう》と誘う同曲。同時に《数えきれないほどのアリガトを言うよ》は、集まった者への感謝のようにも響いた。また、「Boohoo」では、突き放すようなスリリングさが味わえ、再びそこに、いい意味での距離感が生まれる。

「Sorry」からは鍵盤やシンセ、同期が加わり、androp4人にプラスαの音世界で送られた。佐藤の幻想的なアルペジオの中、同期音が有機的に絡み合いひとつの芸術を編み上げていった「Sorry」、また以後も各所演出面で大活躍した、楽曲の雰囲気に合わせ並び別れたり、点滅しながら色を変える、可動式ボール型ライトがここから登場。各楽曲の世界観に程よい暖かみのある演出を加えていく。そんな中、シティポップス的な「Proust」ではオルガンの音色も融合し、アダルトでアーバンな雰囲気が育まれ、「Catch Me」では、6/8のリズムとテーマの重さが自身の内側と、今一度真摯に向き合わせた。そして、「Hanabi」では、刹那感と共にぼんやりとした幸せが会場中に広がっていき、同曲が擁する“永遠に一緒にいよう”との誓いがステージと会場の両者で交わされる瞬間を見た。

 中盤では彼らのアコースティックな面が楽しめた。前田がユーフォニウムをメロディ楽器に用いた「Sleepwalker」、サポートキーボーディストの佐藤雄大による流麗でエレガントなピアノと前田のウッドベースの中、「Tokei」が歌われ、ここではみなが椅子に座り聴き入るように厳かな時間が流れた。

 折り返し地点からは会場の雰囲気もガラッと変わり、彼らのハッピーな面が伺え、それは身近さを持って我々の下までやってきた。佐藤のギターもスライドを加え、ピアノもラグタイム感を有したカントリー調の「Kitakaze san」が牧歌性を醸し出せば、その雰囲気を保ちながら次曲の「Neko」に移ると、そのラスティックさが同じ牧歌性にスウィング感を加えていく。

 ここでのMCは佐藤が担当。秋にはライブハウスツアーが行われることが告げられ、「今回は細かく回り、色々な土地に行きます。今度はあなたの街で会いましょう」との嬉しいひと言が、二者の距離をグッと縮めた。
そして、「例え距離があっても、僕たちは曲を通じて心では繋がっているから」と内澤。それを歌で表したかのような「Ao」では、ホーンの音色が神々しくブレイブに鳴り響き、その光景的な青さを場内いっぱいに広げていく。加えて声を合わせる箇所では場内も一緒に歌い、そこに気持ちの同化を見た。一体感のある曲は続く。「Joker」ではダンサブルで上昇感のその先に待っている快感を、また、「MirrorDance」では、観客が曲に合わせてクラップし、場内をバウンスさせた。そして、前田のバキバキのスラップから入った「Sunny day」では、スリリングさとそこを抜けた後に訪れる開放感と、ポリティカルで問題提起なリリックの向こうの心のシャウトが、心の距離を離したり、縮めたりした。

 ラストに向け、ライヴは更なる加速を見せる。性急なダンスナンバー「One」が作品以上のスピード感を伴って、もっと一緒になろうと手を引っ張れば、その腕をガシッと掴み、「大丈夫だよ」と言い聞かせるように、まさにこの時期にぴったりの、開放感溢れる「Yeah! Yeah! Yeah!」が場内も並走し、雄々しくアンセム化させていく。

「自分の心の声を、周りの雑音なんかにかき消されずに、大切にして生きていきましょう。心の声を大切にしてください」の内澤の言葉のあと、「この日ようやく一緒に歌えて、この曲が完成できる。それが嬉しい」と続け、ラストはAimerが呼び込まれ「Memento Mori with Aimer」の再現が成される。ひんやりしながらも優しい神秘性を場内に満たしていった同曲。マスロックなアプローチの中、ユニゾンする違った2つの声質が一瞬正反対に向かい、再度交差し、再び同じ方向をむく瞬間には鳥肌が立った。そしてラストに現れたのは約束の地のようなカタルシス。信じてついてきて良かったと思わせる圧倒的で神々しい場面が待っていた。まさにandropの孤高性が味わえた同曲。やはりこのような面もしっかりと有しているからこそ彼らはいつまでもヴィヴィッドなのだろう。ステージが再びホワイトアウト化し、フィードバック音を残し、ゆっくりとステージを去っていく4人を眺めながら思った。

 一般的にホールのメリットとされる、演出、映像に凝った、いわゆる「魅せる」や「観せる」のようなライヴを予想していた。しかし、逆に歌と演奏とで真摯に対峙し、結果、自分の中で各物語を広げるに至らせた彼らには敬意すら覚えた。
正直、内澤の喉の不調もあり、ライヴ中、歌声が残念な場面も数曲見られた。しかし、この日のandropは、楽曲の熱量や温度、伝えたい事やその伝達メゾッドで、その苦面をカバー。有り余るぐらいのホールならではの「心の距離」を楽しませてくれた。

 5年前のホールでのあの圧倒的な世界観での「眺める」に近い「観る」とはまた違った、「見」「観」「魅」の漢字が各曲から想起された、この日のライヴ。
今回のツアーは5都市。各都市みんなが観に集まってくれた。それに返礼するように、今秋、今度は彼らがみんなに会いに各土地へと赴く。きっとそこには今回のホールでの“自分で楽しむ距離感”とはまた違った距離感が育まれることだろう。その距離感はきっと実際とはまた違った、「心の距離」を味合わせてくれるに違いない。是非、次に彼らが近くに行った際は、各曲毎でのその心の距離を測って欲しい。きっとそれらは驚くほど身近で、驚くほど孤高に感じるはずだから。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:Taichi Nishimaki】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル androp

リリース情報

cocoon

cocoon

2018年03月07日

ZEN MUSIC

01.Prism
02.Arigato
03.Joker
04.Hanabi
05.Sorry
06.Catch Me
07.Sleepwalker
08.Kitakaze san
09.SOS! feat. Creepy Nuts
10.Proust
11.Ao
12.Memento mori with Aimer
bonus track
Tokei (album ver.) ※通常盤のみ収録

お知らせ

■ライブ情報

one-man live tour 2018 "angstrom 0.9 pm"
09/04(火)千葉 LOOK
09/07(金)宮城 Sendai Rensa
09/08(土)福島 郡山CLUB#9
09/14(金)埼玉 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
09/21(金)大阪 BIGCAT
09/22(土)大阪 BIGCAT
10/05(金)群馬 高崎 club FLEEZ
10/06(土)新潟 NEXS NIIGATA
10/08(月)山梨 甲府 CONVICTION
10/14(日)東京 LIQUIDROOM
10/17(水)愛知 NAGOYA CLUB QUATTRO
10/18(木)愛知 NAGOYA CLUB QUATTRO
10/21(日)神奈川 F.A.D YOKOHAMA
10/30(火)福岡 DRUM Be-1
10/31(水)福岡 DRUM Be-1
11/10(土)栃木 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
11/15(木)東京 代官山UNIT
11/16(金)東京 代官山UNIT

LOVE in Action Meeting(LIVE)
06/12(火)東京国際フォーラム ホールC

Mexican Standoff Tour 2018
06/15(金)仙台GIGS

androp Live at Shibuya duo MUSIC EXCHANGE
06/22(金)duo MUSIC EXCHANGE

SUMMER TIME LOVER CIRCUIT「サマラバ!」2018
06/30(土)仙台Rensa

ヒトリエ『nexUs TOUR 2018』
07/08(日)大阪 梅田クラブクアトロ

ジャイガ-OSAKA MAISHIMA ROCK FES 2018-
08/04(土)舞洲スポーツアイランド 太陽の広場 "ジャイガ" 特設会場

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018
08/11(土・祝)国営ひたち海浜公園

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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