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エレファントカシマシ 「新春ライブ 2019」 日本武道館

エレファントカシマシ | 2019.01.30

 エレファントカシマシ恒例の新春公演『新春ライブ 2019』。大阪フェスティバルホール2デイズを終えて東京は日本武道館へ。彼らにとってホームといっても過言でない会場だが、デビュー30周年を越えた彼らが見せてくれたのは、一段とスケールアップした存在感で圧倒するようなライブだった。

 歓声に迎えられ登場した宮本浩次(Vo,G)は思わせぶりにエレキギターを鳴らすと、「脱コミュニケーション!」と叫び、その曲へなだれ込む。石森敏行(G)と重ねるギターリフ、高緑成治(B)と冨永義之(D)のうねるリズムが一つになって宮本の起伏に富んだ歌をがっつり受け止めた幕開けは、息を飲むほどスリリングだった。そして30周年記念作である『Wake Up』リード曲を歌いながら「エブリバディ、ここからもう一度スタートだ、行くぜ!」と呼びかけ、「新しい季節へ君と」へ。村山☆潤の弾くキーボードに合わせてハンドクラップが起こり、金原千恵子ストリングス・チームが加わったドラマチックな演奏を従えた宮本の落ち着いた歌が、力強い31年目の始まりを実感させた。

 宮本はこれから歌う曲のテーマや曲が生まれた背景などを簡潔に説明しながら歌うことが多いと思うのだが、このステージでは珍しくほとんどMCをしなかった。
けれども歌いながら何度も「エブリバディ!」とオーディエンスに呼びかけ、時には歌詞を引用して曲から曲へと流れを作っていった。それだけ歌うこと演奏すること、そして聴いてもらうことに集中していたのだと思う。
「星の砂」では持ち前の剽軽な一面ものぞかせたが、「悲しみの果て」「ワインディングロード」と安定感のある歌を聴かせ、次いで”スペシャル・ヴァージョン”と紹介した、金原千恵子(バイオリン)と笠原あやの(チェロ)をフィーチュアした「リッスントゥザミュージック」は曲の印象を一新する、まさに特別な歌になっていた。金原と笠原が後方のストリングス・チームに戻っての「昔の侍」も抑制を効かせながらドラマチックに効かせ、冨永のマーチング・ドラムが軽やかに響いた「大地のシンフォニー」、ストリングスとキーボードがロマンティックなイントロを奏でた「絆」はメリハリの効いた構成を生かしてスケール感のある歌に引き込んだ。

 ストリングス・チームが一旦退場した次のブロックは、エレファントカシマシというバンドを剥き身で見せるような数曲だ。宮本がタンバリンを鳴らした「too fine life」では、花道を走り回ったり石森と肩を組んだりしながら「エブリバディ、もう一丁!」と盛り上げ、弾き語りで「武道館エブリバディ~」と即興で歌いかけて始まった「珍奇男」では石森と向き合ってギターを合わせ、「今をかき鳴らせ」はアップテンポな演奏でオーディエンスを巻き込んだ。4人が揃えばいつだってこんな感じだと言わんばかりの熱っぽさ、これぞエレファントカシマシだ。

 そう思っていたらバンドのメンバーがステージを降り、「何度かやったことがある」と、サポート・メンバーのヒラマミキオと村山☆潤、金原・笠原を呼び込んでの「風に吹かれて」。バンドでの力強さとは対照的に流麗なストリングスとピアノが、宮本の歌に繊細な明暗を生み出してジワリと染み込むような味わいを生んでいた。こんな形で歌うのも、31年目だからかもしれない。

 メンバーが戻り「桜の花、舞い上がる道を」を宮本がアコギを抱えて歌い出すと、揺るがぬエレファントカシマシらしさに瞬時に包まれた。「笑顔の未来へ」「ズレてる方がいい」と不動のナンバーが続くと、宮本の歌がさらに伸びやかになってきた。やはり珍しいヴァージョンで歌うのは緊張したのだろうかと、この辺りになって気づいたのだが、手拍子を送ったり曲に合わせて腕を振ったりするオーディエンスに「ありがとうございます」と応えて歌い出した「俺たちの明日」は、胸が熱くなるほどいい歌だった。演奏では参加しないストリングス・チームも立ち上がって腕を振ってエールを送ったほど。歌の最後に「今年もよろしくエブリバディ~」と宮本が言うと、さらに大きな拍手が送られた。

 ギターを爪弾きながら歌い出した「マボロシ」も、このステージでなければ選ばれなかった曲ではないか。そんな夢のようなひと時を「朝」の鳥の声が醒ましライトが回って空気を一変させると、「悪魔メフィスト」の降臨だ。スリリングでアグレッシヴなこの曲で、突き放すように第1部を締めたあたり、一筋縄ではいかないエレファントカシマシの現在を象徴していると言っていいだろう。心にしみる歌も、心を乱す歌も、彼らは手加減せずに発してくる。その振幅こそが味なのだ。

 宮本が黒いシャツに着替えてきた第2部は、「Easy GO」からスタート。30年目の新作『Wake Up』収録曲ながら初期衝動丸出しの前のめりな歌は、昨年来話題沸騰ソングとなっているが、この日もマイクを握りしめ熱唱する宮本の歌は半端ない。その熱量が記念すべきデビュー曲「デーデ」に繋がり、明るくライトに照らされたオーディエンスの熱気も一気に上がった。

 この日はレアな曲が幾つも披露されたが、「かけだす男」もその一つではなかったか。思いに駆られて雨の中を走っていく男の性急さを生かしながら、宮本は見事に歌って見せた。白いライトが柱状に立ち並ぶ中、斜めに宮本を照らす光がピュアな男心を光らせているように見えた。続く「旅立ちの朝」は「エブリバディ~」と呼びかけながら鼓舞するように”もう一度立て”と歌い、エンディングでは”俺は行く”とテンポを落として歌ったのがドラマチックで印象的だった。ここでメンバーを紹介し、「素晴らしい新春ライブになりました、ありがとう武道館」と挨拶をしてアコギを持つと、裏声で「ベイベ~」と歌い出し「風」へ。じわりとバンド・サウンドが盛り上げオルガンが哀愁を誘うこの曲が終わると、長い間拍手が途切れなかった。

 ホッとするような「四月の風」で風向きを変え、「エブリバディ!」と呼びかけ「so many people」で加速すると「ファイティングマン」へと突っ込んでいった終盤もエレファントカシマシの真骨頂。”Baby、ファイティングマン! エブリバディ・ファイティングマン!”とオーディエンスに歌いかけながら宮本はステージを動き回り、曲の締めには思い切りジャンプ。そしてメンバーたちと手を繋ぎ客席に頭を下げた。

 アンコールは「今宵の月のように」。軽やかに歌い出しバンドのおおらかな演奏で武道館の隅々まで声を届けた後、一旦は終わろうとしたのだが「もう1曲?」とメンバーで相談し予定外の「ゴクロウサン」を演奏。滅多にないことだが、こんなことができるのもエレファントカシマシ。ストリングス・チームも加わり最後の挨拶をするまで3時間強。振り返ればヤンチャ小僧のようなマインドを持ちながら、これほど圧倒的なライブを見せるエレファントカシマシの未曾有の可能性を、改めて感じさせられた夜だった。

【取材・文:今井 智子】

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リリース情報

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セットリスト

エレファントカシマシ「新春ライブ 2019」
2019.1.16@日本武道館

    第1部
  1. 01. 脱コミュニケーション
  2. 02. Wake Up
  3. 03. 新しい季節へキミと
  4. 04. 星の砂
  5. 05. 悲しみの果て
  6. 06. ワインディングロード
  7. 07. リッスントゥザミュージック
  8. 08. 昔の侍
  9. 09. 大地のシンフォニー
  10. 10. 絆
  11. 11. too fine life
  12. 12. 珍奇男
  13. 13. 今をかきならせ
  14. 14. 風に吹かれて
  15. 15. 桜の花、舞い上がる道を
  16. 16. 笑顔の未来へ
  17. 17. ズレてる方がいい
  18. 18. 俺たちの明日
  19. 19. マボロシ
  20. 20. 朝
  21. 21. 悪魔メフィスト
  22. 第2部
  23. 22. Easy Go
  24. 23. デーデ
  25. 24. かけだす男
  26. 25. 旅立ちの朝
  27. 26. 風
  28. 27. 四月の風
  29. 28. so many people
  30. 29. ファイティングマン
  31. <アンコール>
  32. 30. 今宵の月のように
  33. 31. ゴクロウサン

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