７作目『東京の空』を最後にエピック・レコードとの契約も終わり、所属事務所も解散。窮地に追い込まれたエレファントカシマシだったが、宮本浩次はバンドを建て直すべくメンバーに喝を入れ、曲作りに励み、再びチャンスを手にする。
　新たな所属事務所（FAITH A&R）とレーベル（ポニーキャニオン）とタッグを組んで心機一転、96年８月にリリースされたのが、この8枚目のアルバム『ココロに花を』だ。

　デラックス・エディションではその経緯を当時のプロデューサーが記してるが、ボーナス・ディスク収録の当時のデモ・テイクを聴けば、歌詞もない曲が持つパッションに彼が心を動かされたのもわかるというものだ。当時の宮本は、バンドを続けるためにはヒット曲が必要と思いスピッツなどを聴いて研究したと言うが、単に売れ線を目指したわけではない。山のような苦悩を経て、彼は自分の言葉やメロディの本質を変える事なく、広く届く歌というものを開発した。その成果が「四月の風」「悲しみの果て」といったヒット曲となり、『ココロに花を』に結実したのだ。そして、ここから彼等の快進撃が始まる。続く『明日に向かって走れ-月夜の歌-』『愛と夢』と名作を生み出して行くのである。

【文：今井智子】