高橋優の人生観が詰まった新曲「太陽と花」

高橋優 | 2014.05.23

 高橋優のニューシングル「太陽と花」(TBS金曜ドラマ「アリスの棘」主題歌)は、ダイナミックなバンドサウンドのなかで「尊い輝き 愛しい輝き/庇われることもなくただ花は咲き誇る」という言葉が響き渡るアッパーチューン。昨年11月の日本武道館ライブ、今年3月にリリースされたシングル「パイオニア/旅人」を経て、シンガーソングライター・高橋優の表現はさらに深みを増している――そんな手ごたえがしっかりと伝わってくる、充実のナンバーだ。

EMTG:シングル「太陽と花」はドラマ「アリスの棘」の主題歌。曲作りはどんな風に進めたんですか?
高橋優:まず、プロットを読ませてもらったんですよね。医療ミスの被害に遭った女性が復讐を企てるというドラマで、「すごくおもしろそうだな」と思ったんですけど、自分自身の本音を言えば復讐という行為は好きじゃないし、それは人として良くないことだと思ってるんです。だから、別の部分をフォーカスしたいとずっと考えていて…。
EMTG:というと?
高橋:誰かに悲しみを味わされて、“あいつにも同じ悲しみを与えてやろう”というのが復讐だとしたら、復讐された人はもしかしたら「自分は良くないことをした」と気付いて、同じような行為を繰り返さなくなるかもしれないな、と。ということは、それ以降、他の人は同じ悲しみを味わうことはなくなるじゃないですか。
EMTG:自分の過ちに気付いて、復讐の連鎖が断ち切られる、と。
高橋:だとしたら“他の誰かの幸せのために、ひとりの人が手を汚している”という構図になるなと思ったんですよね。復讐なんて良いことではないし、誰にもホメられず、どんどん孤独になってしまう。それでもリスクを背負って手を汚す人がいる――そういう状況というのは、医療ミスみたいな大きなテーマではなくても、小さいところにたくさん隠れてると思うんです。それは復讐みたいな良くないことではなくて、“人知れずがんばっている人が、まわりまわって、誰かの幸せを作っている”ということじゃないかなって。こういう取材もそうですよね。黙々と記事を書いてくださるライターの方にスポットライトが当たったり、“金メダル!”みたいなことにはならないじゃないですか。でも、その記事を読んで「俺もミュージシャンを目指そう」と思ったり、記事のなかの発言によって「ボクサーになろう」と思う人がいるかもしれない。そうやって新しい世代の人たちが“花”を咲かせるのだとしたら、ライターの方の作業は“太陽”の役割だと思うんですね。誰かの闇を照らしているわけだから。
EMTG:…そんなこと言われたら、ライターは泣きますね。
高橋:泣いてください(笑)。「誰のためにもなってないかも」と思いながらも頑張っている人こそ、光って見えるんですよね。人知れずアイデアを提示しながら生きてる方々というか…。それは工場で働いている人でも、タクシーの運転手でも、いろんな人に当てはまると思うんですよ。そんなところから「太陽と花」という言葉を思いついて。
EMTG:高橋さん自身にも「自分の歌が誰かの為になるんだろうか」という時期があった?
高橋:いまもずっとそうですよ。1回ライブに来てくれた方がもう1度会場に足を運んでくれるなんて、毎回が奇跡というか、当たり前のことでは全然ないですからね。ずっと路上ライブをやっていて、なかなか自分の歌を聴いてもらえないという経験があるからかもしれないですけど。曲作りに関しても、自分のことなんか知らない人に「高橋優と言います。こういう曲を歌ってます」という気持ちで毎回やっています。それでも「聴いてもらえないんじゃないだろうか?」とか「高橋優? あ、そう」って興味を持ってもらえないかもしれないという不安がよぎることもあるし。
EMTG:孤独ですね…。
高橋:でも、それは自分だけじゃないですから。同じようなことを感じながら曲を書いてるミュージシャンを僕は何人も知ってるし、自分を追い詰めながら、ものすごく良い歌を歌ってる人もたくさんいるので。そういうことを考えていると“太陽が自ら光を放つことで、花は咲く”ということを歌ってもいいかなと思うんですよ。要は当たり前のことですからね、「太陽は自らを焼いて光る 日を浴びた草木は花咲かせる」というのは。
EMTG:高橋さんはきっと、根本の部分で人間を信頼してるんでしょうね。どんな状況であっても、必ず良い方向に行けるはずだっていう。
高橋:それ、別の人にもまったく同じことを言われたことがあります。「だから生きづらいんだよ」って。世の中の人間に幻滅して生きていれば、誰かに優しくされたときに「儲けもの」と思えるし、良い出来事のひとつひとつが輝き出すって…。でも、急にそんなこと言われても無理ですからね。いま仰ったように、そもそも僕は全員に幻滅することが出来ないので。
EMTG:なるほど。
高橋:ただ、揺れてた時期もありました。シングルの3曲目に入っている「16歳」は思春期の頃に書いていた言葉を、2008年に上京したときに曲にしたんですが、そのときはかなり疑問を感じてたんですよ。「何なんだ、人間は。こんなにややこしくて、こんなに汚くて」みたいな。でも、この歌でも「嘘をつかなきゃ生きられない?」「この世界は素晴らしいと 思ってたかっただけなのに…」と歌っていて。やっぱり期待してるんですよね、人に。
EMTG:素晴らしい姿勢だと思います。僕なんかすぐに「バカばっかり!」って思っちゃいますからね、自分のことは棚上げして。
高橋:逆に「自分以外の人はすべて凄い」って思うことがあります。何て言うか、音楽にしがみついてるような感じもあるんですよ。よく「音楽に選ばれた才能」みたいな言い方をしますけど、“選ばれてる”と感じたことなんか1回もなくて、音楽にふり払われながら「もうちょっとやらせてくれー」って必死にしがみついてるっていう。ライブのMCでも「“僕に出来るんだったら、誰にでも出来る”って大きいステージで言いたい」って言ったことがあるんですけど、本当にそういう気持ちなんですよね。今回のシングルも「太陽と花」というテーマが決まるまで、2か月くらいかかってますから。その間、ずっと考えていて…。
EMTG:「ずっと考え事してるな」って、周りの人には伝わるんですか?
高橋:親しい人には伝わっちゃいますね。それは嬉しいことでもあるんですよ。最近“友達を増やす”ということを意識的にやっているんです。新しい友達だけじゃなくて、ずっと連絡を取ってなかった昔の友達を飲みに誘ったり。休みで秋田に帰ったときも、高校のときから会ってなかった友達の連絡先を調べて、会う約束をして。さすがにドキドキしますけどね、そういうときは。役所広司さん主演の「象の背中」という映画があって、余命宣告された人が“謝りたい”と思う人たちに会いに行く話なんですけど、秋田の友達にも“そういうことかと思った”って言われましたからね。
EMTG:何か重大なことが起きてるんじゃないか、と。
高橋:はい(笑)。ただ飲みたかっただけなんですけど。
EMTG:(笑)シングルの2曲目に収録されている「以心伝心」は、まさにコミュニケーションのズレがテーマですね。
高橋:実際に人と会ったり、人間関係が生まれているなかで感じることですよね。この曲には、ここ最近の自分の傾向が出てると思います。既に他者が存在している状態というか。それこそがおもしろいんですよね。その人がどんな人かって、ずっとわからないじゃないですか。結婚しても、ずっと友達でいても、突拍子もないことがあったり、想像つかない部分があるっていう。なのに“相変わらずだな”というところもあって。それが興味深いし、おもしろいと思うんですよ。
EMTG:最後にシングル「太陽と花」と同時にリリースされるライブ映像作品「高橋優2013日本武道館【YOU CAN BREAK THE SILENCE IN BUDOKAN】」についても聞かせてください。いま振り返ってみると、どんなライブでした?
高橋:去年までの総決算ですね。表現力を含めて、ぜんぶ出せたんじゃないかな、と。「ここは通過点です」というのはあの日のステージでも言ったんですけど、とにかく「一度出し切らないと、次に進めない」と思っていたんです。全国からたくさんの人が集まってくれた場所で「高橋優はこういうライブをやっています」ということを出し切って、「さあ、次に進もう」っていう。いろんな曲を作りたい、いろんなライブをやりたいということでは、まだまだ満足してないんです。その後シングル「パイオニア/旅人」が出て、今回の「太陽と花」があって。ドキュメントではないですけど、そうやってずっと続いていくんだと思います。

【取材・文:森 朋之】

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リリース情報

太陽と花[初回限定盤]

太陽と花[初回限定盤]

2014年05月28日

ワーナーミュージック・ジャパン

[CD]
1. 太陽と花
2. 以心伝心
3. 16歳(弾き語り)

[DVD]
高橋優2014東北ライブハウス大作戦ツアー(宮古~大船渡?石巻)“一人旅”完全密着5日間

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最後に調べたのは「アリスと棘」ですね。TBSさんのホームページを見てました。主演の上野樹里さんのコメントを読んだりして。


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2014/06/01(日)大阪城ホール

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2014/07/19(土)静岡県・つま恋

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2014/09/27(土)、28(日)福島県 郡山総合運動場 開成山野球場

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