2月にリリースした「Be...」がロング・ヒットを記録し、一気にブレイクを果たしたMs.OOJAの、初めてのワンマン・ツアーとなる「LIVE TOUR 2012 "HEART"」。初日の会場となった東京・恵比寿リキッドルームは、開演前からファンの熱気に溢れている。

　“みんなー、いくよー！”という声とともに、Ms.OOJAがステージに飛び出し、ライブは元気にスタートした。初めてのワンマン・ツアーとあって、彼女がどんなパフォーマンスを見せてくれるか興味津々だったが、DJも含む5人のバンドをバックに、『VOICE』『HEART』という、これまでリリースした2枚のアルバムからのナンバーを中心に、エネルギッシュな歌声を聴かせてくれた。実は完全なソロ・ライブは、この日が生涯で2度目だったということだが、そんなことをまったく感じさせないくらい堂々としたパフォーマンスだ。そして何より、彼女の歌声の存在感に圧倒されてしまった。“1/f揺らぎ声”として注目を集めている彼女の声だが、ライブでは、艶のある、とても真っ直ぐな歌声で、ストレートに聴き手の耳に届いてくる。その声の力は圧倒的だ。さらに、客席の後ろのほうにいても、ちゃんと歌詞が聴き取れて、歌の世界観や情感がしっかりと伝わってくるのだ。特にバラード曲における、説得力満点のボーカルと、ダイレクトに伝わってくるメッセージは、ほんとうに感動的だった。まさに彼女は、歌を伝える歌手として、天分の才能の持ち主だといえるだろう。Ms.OOJAのライブ・シンガーとしての才能のすごさが、ヒシヒシと伝わってくる、圧巻のボーカルだ。ステージでも、曲によって、スタンド・マイクで歌ったり、ハンド・マイクで歌ったりと、マイクの持ち方を使い分けていたが、これもきっと彼女なりのこだわりだろう。

　また途中、“私はクラブ出身だから、その頃のことを忘れないように”と、DJ一人だけをバックに歌ったり、さらに11月7日にリリースするカバー・アルバム『WOMAN -Love Song Covers-』からのナンバーをいち早く披露したり、衣装チェンジの合間にスペシャル・インタビューの映像が流れたりと、様々な趣向を凝らした演出で、観客をどんどん彼女の世界に引き込んでいく。また真摯に気持ちを伝えようとするMCも、とても彼女らしくて好感が持てた。

　そして、もうひとつ印象的だったのは、初めてのソロ・ツアーとは思えないくらい、彼女自身がステージで歌うことを楽しんでいた、ということだ。ステージでの立ち振る舞い、バンド・メンバーとの呼吸の合わせ方、ファンたちとのコール&レスポンスなど、すべてが、ちゃんと地に足が付いている感じで、とても楽しそうだ。ファンの前で、実際に歌えることの喜びが、ストレートに伝わって来て、こちらも楽しくなってくる。やっぱり彼女は、生粋のシンガーなんだなと、ステージを観ていて感じた。後半、みんなで一緒に歌ったり、一緒にタオルを回したりしている彼女の心からの笑顔は、とてもステキだ。

　このファースト・ソロ・ツアーは、Ms.OOJAというシンガーの、ライブ・アーティストとしての実力の豊かさと、“音楽を伝える”という才能のすごさを感じさせた、充実のステージだった。必要以上の舞台装置や仕掛けなどは必要なく、ただ彼女の生身のパフォーマンスだけで、ここまでファンを楽しませ、その世界に引き込んでいく才能は、素晴らしいと思う。きっとここから、彼女はもっともっと大きなアーティストに成長していくだろう。そんなことを予感させる、Ms.OOJAというアーティストの力強い第一歩となった、感動的なライブ・ツアーだ。

【取材・文：熊谷美広】