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ACIDMAN、アルバム『新世界』リリースツアーファイナル@日本武道館の模様をレポート!

ACIDMAN | 2013.08.08

 アリーナはオール・スタンディング・エリアになっている。ACIDMANらしいセッティングだ。ステージ前面は真っ白なカーテンに覆われていて、優雅なドレープが微風に揺れている。それをスクリーン代わりにして、『新世界』のアルバム・ジャケットと同じ水滴の巨大な映像が映し出されると、いよいよ開演だ。
 映像に合わせて流れるSEの「gen to(intro)」に、浦山一悟がマレットを使ったドラマティックなタムタム&シンバル・ワークを加えて盛り上げる。カーテンの真ん中が割れて、メンバー3人が姿を現わすと、大きな歓声が上がった。身体を深く折り曲げてベースをプレーする佐藤雅俊が印象的だ。

 そして静寂。武道館の広いステージの中心に、3人は割と近い距離にそれぞれ位置取っている。ライブハウスで演奏するイメージに近い距離感だ。
 大木伸夫が自ら弾くギター1本で「SUSY」を歌い始める。『新世界』と同じ曲順のオープニングだ。すぐに2人が加わる。メンバーがお互いの音をよく聴いて、反応する。キャリアを積んだバンドらしい、落ち着いたミディアム・ナンバーだ。それは大会場でのライブのオープニングとしては、地味だったかもしれない。だが、曲の後半のコーダの部分でじっくり盛り上げる3人からあふれ出る自信が、かえってACIDMANというバンドの音楽に対する真摯な姿勢を感じさせて好感が持てた。
 「ツアー・ファイナルの武道館に、ようこそ。この瞬間は二度とないので、みんなで最高の日にしましょう」と、大木が無事にファイナルを迎えた歓びを表わす。続く「NO.6」はシンコペーションの効いた激しい曲で、オーディエンスもその演奏に応える。「swayed」は佐藤のディストーション・ベースからスタートし、レーザー光線が会場を染める。映像や照明と合わせてバンドの世界観を表現するやり方は、このバンドがずっと追求してきた手法で、この日も完成度の高いパフォーマンスが繰り広げられたのだった。

 エルビス・プレスリーの大ヒット曲「Can’t Help Falling In Love」(好きにならずにいられない) のカバーから、暗転をはさんで2010年に発表された前作オリジナル・アルバム『ALMA』 のタイトル曲を歌う。佐藤がグロッケンを弾き、浦山は再びマレットを取って幻想的なサウンドを奏でる。背後には星雲の映像が流れている。
 ACIDMANならではの時空間に武道館を塗り替えた後、いよいよ『新世界』のメイン・ナンバー「風追い人」だ。この曲のレコーディングにはピアノに坂本龍一が参加していて、前編と後編の2部構成からなる壮大なナンバー。アルバムを聴いたときから「ライブでどうやるのだろう」とイメージを膨らませていたオーディエンスたちは、この“死と再生”を描いた叙事詩を目と耳で体感する。続いて、世界的ベストセラー小説を題材にした 「アルケミスト」。ギターの美しいアルペジオが、オーディエンスをアルケミストと少年が出会った砂漠とオアシスの世界へと誘う。この流れが、この日のハイライトになった。

 「いや?、いい曲でしたね。確かにモロッコの砂漠の風が吹いた気がします。ツアーで映像を使うのはこのファイナルだけなんですが、どうでしょう?」と浦山がユーモラスに語りかける。そう、ACIDMANにとって、武道館は特別な場所なのだ。もちろんキャパシティも大きいが、それ以上に、この大きさだからこそ有効な映像や照明が使えるからだ。メンバーはもちろん、オーディエンスもそれを知っていて、武道館に集まってくる。ツアー・ファイナルという以上の意味合いを持っていて、このバンドにしかできない“特別なライブ”になっていた。

 オープニングもそうだったが、この夜は1曲の中に豊かなドラマを含むナンバーがたくさん演奏された。それらは映像や照明とリンクして、音楽以上の経験としてオーディエンスに提供される。昨年、結成15周年を迎えたバンドの一途な活動が、こうしたオリジナリティの高い表現を生んだのだ。

 ACIDMANの世界観にどっぷりつかったオーディエンスは、アンコールの後、さらにダブル・アンコールを要求し、応えてACIDMANはラスト・ナンバーとして「廻る、巡る、その核へ」を演奏した。最大スケールのアニメーションを背後に従えたそのパフォーマンスは、宇宙と命をテーマにしたこの曲のあるべき姿そのものだった。以前に比べたら安易にライブが行なわれるようになった武道館という場所の持つ特別な意義を、改めて痛感したライブだった。

【取材・文:平山雄一】
【撮影:河本悠貴】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ACIDMAN

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リリース情報

新世界

新世界

2013年02月27日

EMIミュージックジャパン

1. gen to (intro)
2. SUSY
3. 新世界
4. NO.6
5. ラストコード
6. アルケミスト
7. 風追い人 (前編)
8. 風追い人 (後編)
9. Further~夜になる前に~
10. 君の正体
11. カタストロフ
12. 白光
13. to gen (outro)

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セットリスト

ACIDMAN LIVE TOUR “新世界”
2013.7.26@日本武道館

  1. gen to(intro)
  2. SUSY
  3. NO.6
  4. swayed
  5. 君の正体
  6. ラストコード
  7. Further〜夜になる前に〜
  8. スロウレイン
  9. Can’t Help Falling In Love
  10. ALMA
  11. 風追い人(前編)
  12. 風追い人(後編)
  13. アルケミスト
  14. FREE STAR
  15. to live
  16. カタストロフ
  17. 新世界
  18. 白光
Encore
  1. ある証明
  2. Your Song
W Encore
  1. 廻る、巡る、その核へ

お知らせ

■ライブ情報

WILD BUNCH FEST. 2013
2013/08/17(土)山口きらら博記念公園

THE WILD ONE
2013/08/26(月)東京・Zepp DiverCity

RUSH BALL 2013
2013/09/01(日)大阪・泉大津フェニックス

ALPEN・SPORTS DEPO Presents TREASURE05X 2013 -sweet 10 treasures-
2013/08/31(日)愛知・蒲郡ラグーナビーチ

LIVE福島 CARAVAN日本 2013 FINAL 風とロック芋煮会2013
2013/09/21(土)福島県 猪苗代町 風とロック芋煮スタジアム

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2013
2013/09/22(日)中津川公園内 特設ステージ


※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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