Ms.OOJAの、サード・オリジナル・アルバム『FAITH』を引っさげての全国ツアー。彼女のソロ・ツアーはこれが2回目となる。
　黒のパンツに、銀のラメが施されたトップス、そしてリーゼントっぽいヘア・スタイルという、ちょっぴりボーイッシュなスタイルのMs.OOJAがステージに登場し、ピアノだけをバックに、30歳の女性の切ない恋愛を歌ったバラード「30」を歌い出すという、意表を突くオープニングで、ライブはスタートした。

　その後は4人編成バンドと2人のコーラスが加わり、1曲目から説得力溢れるボーカルで、会場を魅了していく。彼女の歌声は、ライブでより力強く、表現力溢れるものになっている。続いて「Shiny Sky」「Life」「It’s OK」「Love’s here」と、アップ・テンポのナンバーが立て続けに歌われ、会場のボルテージも一気に上がっていく。Ms.OOJAといえば、どちらかというとバラードのイメージも強いのだが、こういった元気のいいパフォーマンスもとても魅力的だ。真っ直ぐな彼女のボーカルが、ダイレクトに聴き手のハートに伝わってくる。続いて「Where is my place」「優しい雨」「Goodbye」と、『FAITH』から、ロック・テイストを感じさせる楽曲が続けて歌われたが、切ない歌詞を、シンプルなリズムに乗せて歌い切るというアプローチは、彼女の新たなる魅力といえるだろう。こういったスタイルでも、そのボーカルの説得力は抜群だ。

　次の「JUS’TONIGHT」では、スペシャル・ゲストとしてPUSHIMが登場。エネルギッシュな歌声とパワフルなパフォーマンスは迫力満点だ。Ms.OOJAとPUSHIMは、まったく違った個性を持ったシンガーだが、そのふたつの声が重なり合うと、この2人でしか作り出せない世界観が見事に構築されていく。Ms.OOJAの歌声も、レゲエのグルーブに見事にフィットしていたし、とても楽しくアゲアゲのデュオだった。

　衣装替えのあと、アコースティック・ギターだけをバックに、愛する決意を歌ったバラード「ANSWER」をしっとりと歌い上げると、その後、11月6日に男性シンガーのラブ・ソングをカバーしたアルバム『MAN -Love Song Covers 2-』をリリースすることがアナウンスされた。同アルバムのプロデューサーでもあるBU-NIがもう1人のスペシャル・ゲストとして登場して、彼のピアノをバックに、尾崎豊の「Forget-me-not」をじっくりと歌い上げた。さらに同アルバムの原点にもなったという、中西保志の「最後の雨」が歌われた。男性の歌にもかかわらず、Ms.OOJAが歌うと、まるで彼女のオリジナル曲のように聞こえてくるから不思議だ。あらためて彼女の表現力の豊かさを感じるとともに、アルバムがとても楽しみになってくるパフォーマンスだった。さらに、アコースティック・ギターやアップライト・ベースなどをバックにした「紫陽花」、友人の結婚を祝って作られた「JULY」と続き、その温かみのあるボーカルが会場を包み込んでいく。

　そして「私のライブは、盛り上がれるところが少なめなので、盛り上がるんだったら、あとはここしかありませんよ」という言葉とともに、「Movin’」と「YOU & I」という、『FAITH』からのアップ・ナンバーで一気に畳みかけてきた。「Movin’」では観客と一緒に踊ったり、「YOU & I」では会場がひとつになってタオルを振り回したりと、さらにヒートアップしていく。歌声やパフォーマンスがさらにエネルギッシュになりながらも、その歌詞のメッセージがしっかりと伝わってくる彼女のボーカルは強力だ。まさに大胆さと繊細さを兼ね備えた、存在感溢れる歌声と、ライブ・パフォーマーとしてのMs.OOJAのすごさを感じさせる、迫力満点のステージングだ。
　ラストは、彼女のブレイクのきっかけとなった「Be...」、さらに『FAITH』の締めくくりでもある、スケールの大きなバラード「I WILL」がじっくりと歌い上げられ、この日のライブは終了した。前回のツアー同様、アンコールは行なわずに、予定された曲目の中ですべてを伝えるという、彼女の強い意志が感じられるプログラムだった。
　Ms.OOJAというアーティストの、さらなる進化と、会場に詰めかけたファンへの強い愛情が感じられた、充実感溢れるライブだったといえるだろう。

【取材・文：熊谷美広】
【撮影：上飯坂一】