この日をずっと待ってた。――阿部真央、歓びに満ち溢れた初武道館公演
阿部真央 | 2014.10.28
「ついにこの日が来たか」という思いと、「まだやってなかったっけ?」という思いが交錯する。阿部真央は早くからその天才を評価されていたし、一昨年の時点ですでに 武道館を充分やれるライブの実力を身につけていた。
今年はクリープハイプや[Alexandros]が初武道館を行なったり、NICO Touches the Wallsが2度目 のチャレンジを成功させたり、オールスタンディングにこだわってきたDragon Ashが初めて武道館に立ったりと、“武道館”はライブ・アーティストにとって以前より身近な“新たなステイタス”の場となっている。その意味で言うと、阿部は前述のどのバンドとも違うアプローチで、武道館に行き着いた。 阿部はライブをアルバムと並んで最重要な活動と位置付け、メディアに必要以上 に登場することなく、音楽の実力をもって人気を獲得してきた。だから僕は最初に書いたように「ついに」や「まだ?」という感想を抱いて武道館に足を運んだのだが、その先入観はオープニングで見事に打ち壊されたのだった。
ピンスポットを浴びて、阿部が「believe in yourself」を歌い始めた途端、武道館の明 りが全部灯って、会場中が照らし出される。会場を埋めた満員のオーディエンスを見て、オーディエンス自身がアガる、アガる。もちろんその光景は阿部にも見えているはずなのだが、彼女の声はまったく乱れることなく、力強いリズムを刻む。それでも、声からは歓びがあふれ出しているのが分かる。阿部は、歓喜を全身で味わいながらも、抑制して歌うという離れ業をやってのけているのだ。それは「ついに」というチャレンジ精神と、「まだ?」という実力が合わさった歌声だった。
彼女はファンに対しては限りなく優しいが、メディアに対しては時に厳しく接する。ファンとのコミュニケーションをいちばん大切な軸と考えているから、それを少しでも捻じ 曲げてしまう可能性のあるものに対しては、慎重に対処する。が、ライブにはそうした“邪魔者”が入り込む余地はない。阿部真央のライブは、歌でオーディエンスを日常から解放させてあげると同時に、彼女自身も解放される大切な場なのだ。
最新シングルを冒頭に持ってくる、強気。2曲目は、デビューアルバムの表題曲「ふりぃ」で、一気に時間軸をさかのぼる度胸。爆発寸前の盛り上がりの真っ只中で、3曲目 にバラード「貴方の恋人になりたいのです」を歌う自信。
「去年の暮れに発表した日から、この日をずっと待ってました。オチャらける余裕ないくらい、感動してます」という第一声には、強気や度胸や自信とは裏腹な、新鮮な震えがあった。
そして、もう一つ気付かされたのは、彼女の声の変化だった。喉の手術以降、阿部は歌い方を変えた。無理な力みを排除し、できるだけスムーズに歌う。声は明るいトーンを増し、ポップな曲はよりポップに表現できるようになった。一方 で、負けん気むき出しの曲は、そのニュアンスが少し柔らかくなった。その変化はCDにもライブにもすでに表われていたが、武道館というクリアで広い会場でより顕著に感じられたのだった。
たとえばピアノだけをバックに歌った「don’t leave me」は、阿部の中でも悲しい歌だが、そこに一点の明るさが感じられた。続く「morning」は、アコギ1本の弾き語り。この歌も暗さの向こうに温かさが加わって、素晴らしい歌が聴けたのは、この武道館での最大の収穫の一つだった。
僕にとってベストだったのは、終盤の「戦いは終わらない」。作ったばかりの頃は“悲壮感”が前面に出ていたが、この日は前を向く気概がはっきり感じられて“歌の成長”が歴然としていた。おそらくこの“男前なあべま”に、男女問わずヤラレてしまうのだろう。実際、僕も完全にヤラレてしまったのだった。
面白かったのは、本編ラストの「ロンリー」だった。「歌ってくれますか?!」という阿部の呼びかけに応えて、場内は大合唱になったのだが、聴こえてくるのは圧倒的に女子の声だった。オーディエンスの口を見ると、ほぼ同数いる男子も確かに歌っている。だが、全体としては“8000人のあべま”が歌っているように聴こえ、同性が寄せる信頼の大きさを具体的に知ることができた。
「この5年間、嫌なこともいっぱいあって、止めたいと思ったときもあったけど、ここでみなさんに会えて、すべてチャラ」というアンコールのMCは、勢いだけでなく武道館にたどり着 いた阿部真央の実感がこもり、彼女の“初武道館”の唯一無二の意義が凝縮されていて、とても感動的だった。
【取材・文:平山雄一】
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リリース情報
お知らせ
阿部真央 らいぶNo.6
2015/03/10(火)大分 iichikoグランシアタ
2015/03/12(木)広島 アステールプラザ大ホール
2015/03/14(土)福岡 福岡サンパレスホテル&ホール
2015/03/20(金)鳥取 米子市公会堂
2015/03/21(土・祝)岡山 岡山市民会館
2015/03/29(日)埼玉 大宮ソニックシティ大ホール
2015/04/02(木)香川 アルファあなぶきホール小ホール
2015/04/04(土)神戸 神戸国際会館こくさいホール
2015/04/05(日)奈良 なら100年会館大ホール
2015/04/11(土)宮崎 宮崎メディキット県民文化センター演劇ホール
2015/04/12(日)鹿児島 鹿児島市民文化センター第2
2015/04/18(土)新潟 新潟市民芸術文化会館・劇場
2015/04/19(日)福島 郡山市民文化センター中ホール
2015/04/25(土)愛知 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
2015/04/26(日)三重 三重県文化会館中ホール
2015/05/01(金)石川 金沢市文化ホール
2015/05/02(土)長野 ホクト文化ホール中ホール(長野)
2015/05/07(木)岩手 岩手県民会館中ホール
2015/05/08(金)宮城 仙台市民会館大ホール
2015/05/17(日)北海道 札幌市教育文化会館大ホール
2015/05/23(土)大阪 大阪オリックス劇場
2015/05/24(日)大阪 大阪オリックス劇場
2015/05/31(日)東京 東京国際フォーラムホールA
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
■『阿部真央らいぶNo.6』
あべまにあ会員通常先行
【受付期間】
2014/10/22(水)14:00~10/31(金)14:00
【受付枚数】
1回各公演毎4枚まで、最大全公演選択可
▽応募資格
「あべまにあ」有料会員にご登録されている方
▼詳細・申込はこちら
http://m.abemao.com/r/liveno6_ck_ml/