1月10日（土）埼玉・戸田市文化会館よりスタートした氣志團、約１年７ヶ月ぶりの全國ツアー『氣志團現象2015 日本全國HALL GIG TOUR「週末大パニック！超激突!!」』。シングル「喧嘩上等」の大ヒット、３DAYSで開催された『氣志團万博 2014』の成功など快進撃を見せた2014年を経て、満を持して始まった今ツアー。「特別客演を迎えた“氣志團一座”といったイメージ」と綾小路 翔（Vo&Dragon voice）が語るツアーは、通常のGIGスタイルに演劇やアクションの要素を多分に加えた、いわゆるロック・ミュージカル的なステージと言えば分かりやすいかも知れないが、演劇と生演奏が絶妙なバランスで絡み合う異常にエンタテイメント性の高いステージはハイクオリティかつ唯一無二！ ここでは追加公演を含む、全國34ヵ所36公演を駆け抜けた今ツアーの東京公演、３月14日（土）に行われた、渋谷公会堂２DAYSの初日を完全レポート。

　開演時間を少し過ぎ、ツアータイトルである“週末大パニック”の意味を想像させるオープニング映像でGIGがスタート。ファンレターに紛れていた、一通の手紙。街を大パニックに陥れる悪のグループ・龍華楼を成敗するため、氣志團が立ち上がる！ 西園寺の重厚なギターリフを合図に、今ツアーのために新調した、ド派手な刺繍ランで姿を現したメンバー。♪2015年ホワイトデーに 氣志團がここに参上！ と始まった「週末大パニックのテーマ」でGIGが華やかに幕を開ける。メンバー紹介も含むこの曲では、それぞれのソロパートで観客を魅了。いやが上にも期待の高まるオープニングに歓声が上がる中、「帰って来たぜ、渋公！」と綾小路が短いMCを挟み、勇ましく力強い「勇気」が観客の気持ちをひとつにすると、大ヒット曲「喧嘩上等」を早くも披露。会場中が振り付けを合わせて、会場がどんどん熱を帯びていく。

「俺たちがお前らを救いに来た、We are 氣志團だぜぇ~~」と始まったMCでは、氣志團に手紙を送った、ヒロイン役の三代目乃羅音娘（ノラネコ）総長・吉川信濃（藤社優美）が登場し、勇ましく仁義を切って喝采を浴びる。ヒロインの登場に彼女をイメージさせる「木更津サリー」を披露すると、綾小路が仁義を返し、物語が本格スタート。「アイツらが攻めて来た！ 翔さん、ひとまず逃げて!!」と信濃が氣志團を逃がすと、会場が暗闇に包まれ、“世界の尾張”こと、尾張龍童（星屑輝矢）率いる龍華楼が、客席後方から登場！ 拍手と歓声、笑い声に包まれながらステージに表れた龍華楼の５人。観客を煽り、罵りまくった後は、自己紹介を兼ねた「龍華楼のテーマ」で会場を恐怖に陥れる！ 「誰が一番最初に（氣志團を）捕まえてくるか、ゲームでもしませんか？」と企む龍華楼一味。それを妨げるように、ヴァイオリンを弾きながら登場したのは早乙女 光（Dance&Scream）。「捕まえろ！」の声で龍華楼が光に襲いかかると、氣志團の演奏する「D×I×Y」をBGMに派手な殺陣のシーンが始まる。切れの良いアクションと鮮やかな刀さばきで観客を魅了する光だったが、最後は尾張に撃ち取られてしまう。「嘘だろ!? 光！ 光ぅ~！」と駆け寄った綾小路が光を抱きかかえながら悲痛の声を上げる中、光を追悼するように始まる「おまえだったんだ」。普段GIGやCDで聴き慣れている曲も、こうして劇中の物語に沿って意味を持って演奏すると、また違った聴こえ方がするし、楽曲の新しい魅力に気付かされるから不思議。

　その後も、龍華楼一味に追われ続ける氣志團メンバーだったが、そこからラブロマンスが生まれたり、思わぬ意気投合から新バンドが結成されたりと、物語は想像も付かなかった広がりを見せ、気が付くと尾張が仲間に裏切られて孤立してしまう。「ワシの恐ろしさを思い知らせてやる！」と始まった尾張のソロコーナーは自慢のハイトーンを響かせて熱唱したり、ピアノソロを聴かせたりとやりたい放題。氣志團と吉川、龍華楼を一列に並ばせてのお仕置きコーナーでは、自由すぎるアドリブで会場中を爆笑の渦に巻き込む！ しかし、尾張が白鳥松竹梅（Ba）にピストルを取り上げられると形勢逆転。「やっちまえ！」の掛け声で、全員から袋叩きに遭ってしまう。そこで尾張への報復に加わらず、「やめろ！」と一喝したのは綾小路。「暴力からは何も生まれない。俺はこいつを許す」と男気を見せ、綾小路と尾張のツインボーカルによる、新曲「ライバルズ」を披露。吉川や龍華楼メンバーをダンサーに従え、オールキャストで魅せる賑やかで壮大な演出はGIGの見せ場のひとつ。さらに團長が吉川に「好きです！」と告白し、「私、松さん（松竹梅）が好き！」と見事にフラれると、松竹梅と吉川を祝うように、これまたオールキャストで「結婚闘魂行進曲｢マブダチ｣」を華やかに披露。ひとまず物語が大団円を迎える。

　路地裏をイメージしたステージセットにもピッタリの硬派なロックンロールナンバー「Rock’n’Roll Graffiti」で始まった終盤戦は、ファイヤーパターンの学ランに着替えた氣志團が気合い十分の歌と演奏、ステージパフォーマンスでしっかり魅せる。息の合った演奏と力強いボーカル、観客の合いの手で会場が一体となった「鉄のハート」、会場中の大合唱に團長が笑顔を見せた「One Night Carnival」がこの日のクライマックスを生むと、ラストは再びオールキャスト勢揃いで、「ゆかいな仲間たち」を披露し、ピースフルな雰囲気の中、本編をフィニッシュ。最後の最後に大どんでん返しがあり、物語もしっかりオチたところで効果的な映像が流れ、これで終演かと思いきや、西園寺 瞳（Gt）のパワフルなギターで新曲「幸せにしかしねーから」が始まる。タフな演奏に乗せて、たっぷり気持ちを込めた歌声はダイレクトに胸に突き刺さる。MCでは、2002年に始めてGIGをした渋谷公会堂への想い、そして『氣志團万博2016』の開催を発表。いつも支えてくれているキッシーズ（氣志團ファン）への感謝の気持ちを込めた「愛 羅 武 勇」、「ホワイトデーだから、この曲でお別れしましょう」と披露した「恋人」で「愛してるぜ~~！」と綾小路が観客に告げ、幸福感が溢れる中、全編が終了。帰りにはホワイトデーということで、綾小路が自腹で用意したマシュマロを全員にプレゼント。彼らのファンを想う強い気持ちは敬服するばかり。

　彼らにしか出来ない、唯一無二のステージを完成させ、さらなる高みへと到達した感のある氣志團は、９月には『氣志團万博』を開催。他の追随を許さない、氣志團ならではの活躍やさらなる飛躍に、今後も期待せずにはいられない。

【取材・文：フジジュン】