ドレスコーズ、待望のセカンドアルバム『バンド・デシネ』リリース!

ドレスコーズ | 2013.11.05

 今にして思えば、昨年リリースしたファーストアルバム『the dresscodes』は、やや肩に力が入り過ぎていた感じ。それでもドレスコーズの内に秘めた能力は充分に伝わってきた。そして今回のセカンドアルバム『バンド・デシネ』は、その潜在能力が一気に開花して、ポップかつ個性的なバンドの全貌が楽しめる。
 その代表曲が、1曲目の「ゴッホ」だ。歌い出しは、なんと トーキング・ブルース。志磨遼平のアングラ芝居の台詞のような言葉の乱打と、菅大智のドラムがバトる。が、サビでは一転して美メロ。山中治雄のベースと丸山康太のギターが加わって、トロけるような旋律が耳になだれ込んでくる。死後に評価された天才画家ゴッホのような生涯は「やだ」と、きっぱり拒絶するリリックが心に刺さる。
 ドレスコーズはやはり、他と比べようのない存在だ。そんなバンドの今を、「ゴッホ」を軸に探ってみた。

EMTG: アルバムを聴いて、最初に思ったのは、曲がすごくスムーズにできたんだなってことだった。志磨くんがツルツル作ってるから、こっちも楽に聴ける。すごく ポップなアルバムに感じられた。
志磨:ファースト・アルバムでは、新しいバンドをやるんだから、僕自身、自分の“手癖”で曲を作るのを禁止してたんですよ。その上で、メンバーから今まで考えたこともないようなことをたくさん教えてもらった。でも今回はそれを解除して曲を作った。僕が手癖で曲を作っても、メンバーのフィルターを通せばドレスコーズの曲になるっていう自信があったので。だから曲作りは楽チンでした。そこからバンドでアレンジするのに時間をかけました。
EMTG:具体的には、どんな風にアレンジを進めたの?
志磨:コードも何も付いていない“素のメロディ”をみんなのところに持っていって、コードやリズムや曲の構成を4人みんなで詰めていったんです。
EMTG:その作業はいつごろから始めたの?
志磨:曲作りはファーストが出来た後、すぐに始めて。今年1月から3月のツアーでは『バンド・デシネ』に入ってる「Zombie」も「Teddy Boy」もやってたんですよ。そこから「トートロジー」と「シネマ・シネマ・ シネマ」が出来て全体像が見えてきて、最終的には8月に完成しました。
EMTG:じゃあ、ライブの影響がアルバムに出てるのかな?
志磨:ありますね。ツアーの最初の時期は、ライブが1本終わるたびに「くやしい、くやしい」って言ってた。まだ音源を聴いてないお客さんは、僕たちを見てもポカーンとしてるだけで、メンバーも即効 性のある曲が欲しいって言ってましたね。
EMTG:その頃はまだドレスコーズは “新人バンド”だったもんね。
志磨:そうです、そうです。だから久しぶりに自分の“負のエ ネルギー”を感じましたよ。他のバンドがうらやましかったり、早くシーンから認められたかったり。それは20代の頃にずっと感じてたことでもあった。その苦しさを思い出して、それが自分の原点になってることも思い出しました。
EMTG:たとえばそんな感覚が「ゴッホ」に出てるのかな? 画家のゴッホは死んでから評価されたけど、♪ぼくは ゴッホじゃやなんだ♪って歌ってるものね。
志磨:そう、ゴッホは芸術に殉じた人。一生を棒に振っても、自分の絵を追求した。でも僕はそれはイヤだ。やっぱり、生きてるうちにウケたい。もっと言えば、自分たちは生きてるうちに幸せになる権利がある。全部、楽しみ尽くしたいっていう。
EMTG:いい感じの“欲張り方”だね。それにしても「ゴッホ」は、最初はトーキング・スタイルから入って、サビでメロディに行く展開が意外だった。ファンキー・モンキー・ ベイビーズみたいじゃん(笑)。 こんな構成は初めてじゃないの?
志磨:そうなんですよ、僕がいちばん嫌いなスタイル(笑)。僕はピュアなものが好きだから、一貫性のない音楽は好きじゃない。ミクスチャーなんて、不純ですよ。とんでもない。
EMTG:でも、やっちゃった!(笑)。
志磨:はい(笑)。いろいろ曲を作ってて、この曲を最後に作ったんですよ。
EMTG:最後だったんだ。
志磨:他の曲を全部録り終わって、いつもは「ワーッ、完成し たぁ!」ってなるんだけど、今回はそうならなかった。なので、「もしかしたらレコーディングが終わってないのかも」と思った。いい曲ばっかりだけど、整い過ぎてたんでしょうね。狂ってない。ピントが合い過ぎてた。どうしても自分は狂ってるところを推敲しちゃう。自分の音楽に足りないもの、理解できないものをやろうと。で、締切まであと1週間あるから、「もう1曲、作ろう」ってなった。あと1週間しかないか ら、作ったら直す時間がないし(笑)。
EMTG:(笑)前半はファンモンみたいなラップで。
志磨:後半は狂ったポップ。なので、いつもは曲だけ作ってみんなのところに持っていくんだけど、歌詞も曲も作ってから持っていった。
EMTG:メンバーの反応は?
志磨:僕がいつも「不純な音楽は嫌いだ」って言ってたから、 みんな「よくわかんないんだけど。いつも言ってることと違うじゃん」って(苦笑)。
EMTG:あははは。
志磨:でも「ゴッホ」で『バンド・デシネ』が完成したので、 やってよかったです。良い曲を増やすんじゃなくて、狂ってるものをやらなきゃって思ってたから。
EMTG:それに前半部分には“少年マ ンガ原理主義”なんて言葉が入ってて、60年代の“アンダーグラウンド文化”を思い出した。この前、ユニコーンの阿部義晴くんとやってる番組“伸びろ!!袖の下”で、一緒に「ゴッホ」を聴いたんだけど、阿部くんも「こ の人はアングラだね」って言ってた。
志磨:天然のアングラです(笑)。
EMTG:さっき言ってた“負のエネル ギー”が、いい形になって現われたね。そして、アルバム・タイトルに込めたものは?
志磨:“バンド・デシネ”って、フランスのコミックスのジャンルの名前なんですよ。同時に、「ストーリーは続くんだよ」っていうような意味もある。
EMTG:「バンドで死ね」っていう意味もかけてる?
志磨:はい、もちろん(笑)。“バンド・デシネ”はかなり描き込んだコミックスなので、芸術が大衆的になってるとこ ろもドレスコーズに合ってるから、このアルバムのタイトルにぴったりって思ったし。
EMTG:似合ってるね。全体には、丸山(康太)くんのギターが 大活躍してて、ついに名ギタリストの全貌が現われたって感じた。
志磨:丸山さん、喜びます!(笑)。今回のツアー・タイトル“More Pricks Than Kicks”も丸山さんが付けてくれてます。
EMTG:彼はかっこいいし、ツアーで も大活躍しそう!
志磨:丸山さんにはスーツとか着てもらって、かっこつけてラ イブやるので、ぜひ見に来てください。
EMTG:はい!

【取材・文:平山雄一】

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ビデオコメント

リリース情報

バンド・デシネ(通常盤)

バンド・デシネ(通常盤)

2013年11月06日

日本コロムビア

1. ゴッホ
2. どろぼう
3. Zombie(Original Ver.)
4. ハーベスト
5. トートロジー
6. シネマ・シネマ・シネマ
7. Silly song, Million lights
8. Eureka
9. (She gets)the coat.
10. Teddy Boy
11. We are
12. バンド・デシネ

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お知らせ

■ライブ情報

More Pricks Than Kicks TOUR
2013/11/21(木)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2013/11/22(金)仙台JUNK BOX
2013/11/24(日)札幌cube garden
2013/11/27(水)名古屋QUATTRO
2013/11/28(木)高松DIME
2013/11/30(土)福岡DRUM LOGOS
2013/12/01(日)広島ナミキジャンクション
2013/12/03(火)梅田AKASO
2013/12/07(土)SHIBUYA-AX

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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