挫・人間 2nd ALBUM「テレポート・ミュージック」をリリース!

挫・人間 | 2015.08.19

 2008年、当時高校生だったボーカル下川リオが結成した3人組バンド、挫・人間。翌年の「閃光ライオット2009」では決勝進出を果たし……と書くと、その主人公は華々しく人生を謳歌しているように見える。だが、その正体は挫折まみれの“夢を食う妖怪”だった。マイノリティーの不遇を嘆き、どこまでも卑屈で、自虐的な歌詞。なのに、挫・人間のロックは、それでもどこか共感してしまう愛しさがある。念力に救いを求める「念力が欲しい!!!!!」、壮絶なラップバトルを繰り広げる「下川VS 世間」、妄想で彩る渋谷系ポップ「ロンググッドバイ」、変態的なブラコンソング「お兄ちゃんだぁいすき」。濃厚な13曲を収めた『テレポート・ミュージック』で、挫・人間がサブカル/アングラ界からの躍進を目指す!

EMTG:バンド名の「挫・人間」って、もしかして挫折の“挫”?
下川:そのとおりです(笑)。中学のときに考えたバンド名なんです。ってことは、そのときから挫折してたんですけど。バンドを組みたいなって妄想してたときに、THEとか~ズがついてたら、バンド名っぽいなと思って。それで、挫折の“挫”も“ザ”なんで、いいなと思って、つけちゃったんですね。
EMTG:妄想だから、そのときはまだバンドは組んではいないんでしょ?
下川:実際にバンドを組んだのは高校生のときですね。ベースのアベ(マコト)くんとは一緒の大学なんですけど。アベくんは大学の軽音サークルに入ってて、僕はそこに馴染めなかったんです。それで、アベくんが僕を憐れんだといいますか。「下川くんはバンドをやってるのに入らないの?」って言われたんです。でも、僕は怖くて。「お酒とか飲む人が嫌で」みたいな。みんなで音楽を聴くっていう状況が耐えられないです。
EMTG:下川くんの人生はそういうのがいっぱい出てきそうだね?
下川:そう、こういうのが死ぬほど出てくる(笑)。まあ、そこからアベ君と一緒にメンバーを集めて、「閃光ライオット」に出たりもしたんです。でも、僕がひとりで東京に出てきちゃったから、メンバーも抜けちゃって。いまはドラマー募集中です。友達がいないんで、なかなか見つからないんですけどね。
EMTG:今回の『テレポート・ミュージック』を聴いてても、下川くんがサブカルに影響を受けてるのはわかるけど、どういうバンドが好きなんですか?
下川:ナゴム(90年代サブカルシーンの中核となったインディーズレーベル)のバンドですね。最初に好きになったのは筋肉少女帯です。そこから、たまとか有頂天にいって、ヒカシューとかプラスチックスみたいなテクノポップ、P-MODELとかが好きになったんです。中高のときは、かっこいいロックバンドは聴けなかったんですね。かっこよすぎて。
EMTG:下川くんにとってかっこいいロックバンドって誰のこと?
下川:ニルヴァーナです。先輩が聴いてたんで。あとは、先輩がコピーしてたミッシェル・ガン・エレファントとか。俺もカーラジオ(「ピストル・ディスコ」より)とか言いたいと思いつつも、いや…でも俺がそんなことを歌う資格はないと思って、自制して。
EMTG:たとえば筋少にビビッときたのは、やっぱり歌詞?
下川:そうですね。すごくしっくりきたんです。「こいつら、俺のこと知ってるんじゃないか」と思って。他人とは思えなかったんです。「蜘蛛の糸」っていう曲があって、みんなが俺を笑ってるみたいな妄想とか、友だちがいないからノートに猫の絵を描くとか。僕は、猫の絵じゃなくて、「殺し屋くん」っていう棒人間の漫画を描いてたんですけど(笑)。あとは、「ブスの蝉取り」っていう強烈な漫画も描いてて……。
EMTG;タイトルからしてヤバいね(笑)。
下川:でも、それを共有できずにいたんです。だから、バンド活動っていうのも、僕の「殺し屋くん」っていう漫画が、バンドっていうかたちにフォーマットが変わっただけていう感じですね。ピーズとかを聴いても、「いいコになんかなるなよ」とか、「バカになったのに」とか、進学校の悲しみとか歌ってて。僕、私立の進学校に入って、そのなかで圧倒的に落ちこぼれだったから。これはきっと僕のことを歌ってるんだと思ってました。
EMTG:なるほど、それが下川くんの音楽の原体験なんですね。
下川:そうなんです。それを聴いてるうちに、今度は勘違いをして、次は俺が歌う番だと思うんですけど、そこで、大槻さんが《叶わぬ夢もあるんじゃないかニャ~》(「暴れておやりよ」)とか歌ってて。と同時にTHE BLUE HEARTSを聴くと、夢は叶うんだって歌ってて、そのどっちも好きだったんですよね。それで自分は誰なんだろう?って、分裂してる時期もあったんですけど。そのブレみたいなのはアルバムには表れてる気がします。
EMTG:うん。そこが面白いと思う。「下川 VS 世間」とか、その極端な振り幅が共存してる曲だと思うし。でもなんとなく誰もが共感できる部分もあると思うんですよ。
下川:まあ、僕の場合は上がるも下がるも理由がないんですけどね、自律神経が狂ってるというか。躁鬱病なんで。
EMTG:いま話してると、すごく気さくで明るい感じだけど……?
下川:今日はだいぶ躁が出てるんです。久しぶりに人としゃべって、日光を浴びてるんで。そういう意味では、今回のアルバムを作る2ヵ月前ぐらいから躁状態で、急に売れたいと思ったんです。ずっとアングラ/サブカルって言われてきて、アングラ/サブカルの人って不幸を歌うじゃないですか。だから、幸せになっちゃいけないっていうジレンマがあると思うんですよ。たとえば、アイドルが結婚しますってなったら、「あ、裏切られたな」と思う人が絶対に出てくるんですよね。でも、それが僕的には夢があって。ダメなアイドル、B級アイドルとかサブカルアイドルが結婚できたことは、夢があることだと思うんですよ。っていうのを考えたら、「俺も、前向きに生きたい!」と思ったんです。アングラ/サブカルと言われるバンドで、SEKAI NO OWARIぐらい売れたい。それで2ヵ月で30曲作って、アルバムを完成させて。だから今回は躁っぽい曲が多いんです。
EMTG:躁っぽいって、いわゆる明るい曲が多いってこと?
下川:もとが、めちゃくちゃ暗いので(笑)。僕にしてはめちゃくちゃ明るいアルバムができたと思ってます。お茶の間のみなさんに聴いてもらえるように。だから今回は放送禁止用語使ってないですしね。
EMTG:そうだね(笑)。「セルアウト禅問答」とかは、いまのロックシーンにコミットした曲になってると思うけど、これはどういう意図で作ったんですか?
下川:やっぱりアングラ/サブカルバンドにとって、流行りの音楽に迎合することってダサいことじゃないですか。でも迎合してみようと。そっちのほうがかっこいいなと思ったんですよ。わかる人にしかわからないことをやるのは気取ってて嫌だし。誰でもわかる音楽のほうがハードルが高いし、やりがいがあると思ったんです。それで、完全に4つ打ちの流行りっぽい曲を作ってみようと思って。そういう“好奇心旺盛な僕ら”っていうのも今回のテーマなんです。だから、自分が聴いてきた音楽の影響を出してしまおうというのがあって。バンドにいないはずのキーボードを入れたり、打ち込みにもトライしてますね。
EMTG:「今までお世話になりました」とか「ロンググッドバイ」とかは、安心して心地好く聴けるポップスだし、このあたりは渋谷系の影響ですよね?
下川:好きなんですよ。渋谷系とか。こういう音楽もやりたいんですけど。でも、ふだんブギャーッてやってるバンドとは別に、渋谷系のバンドをやるのは嫌なんです。「僕、オシャレじゃねえぞ」みたいな気持ちが強いので(笑)。挫・人間で、オシャレな曲をやるのが良くて。ライブでは両方やってるんですけど、見た人も「や~、今日も挫・人間、気持ち悪かった~」って言ってるんで。結局、僕たちは気持ち悪いんだと思います(笑)。
EMTG:挫・人間を一言でくくると、そうなのかもしれないけど(笑)、実はいろんな要素を持ってる。今作は、それ全部自分なんだよって言いたい作品だと思う。
下川:うん。一面だけを見てほしくはないですね。人間性がわかる音楽が自分も好きだし。筋肉少女帯もメタルみたいな曲ばっかりじゃなくて、良い曲がたくさんあって。筋肉少女帯のそういう曲が好きなんです。それで、僕もこういう曲を作るんです。自分が何を聴きたいかって思ったときに、これしかないバンドより、これもあれも、これも聴きたいみたいな。そうじゃないと自分も飽きちゃうのかもしれないです。
EMTG:ちなみに、すごく気になったんだけど、恋人と一緒に野球を見る歌詞がよく出てくるけど、これは?
下川:妄想です。悲しいことに。妄想がはかどれば、はかどるほど、日常のさりげないところにいる想像をするんですね。「彼女とディズニーランドに行くぜ」みたいなのはファンタジーすぎて、僕のなかでは存在しない現実なんですけど。野球中継を見るとか、彼女と一緒にイギー・ポップを聴くとか、杏仁豆腐食べたいとか。そういう女性が身近にいるようなのは全部妄想ですね。逆に、「過呼吸です」っていう曲は実体験ですけど。好きな子に会うと具合が悪くなるっていう(笑)。僕。過呼吸になった挙句、何をしゃべるかわからなくて、「蝉食べたことある?」とか言っちゃって。気持ち悪がられたっていう。そういう曲です。
EMTG:なるほど(笑)。では最後に、今回アングラ/サブカルをお茶の間に向けて作ってみて、実際にどんな手応えを感じてますか?
下川:わかり合えるなと思いました。けっこう「挫・人間、変わっちゃったよ」とか言われることも覚悟してたんですけど、意外と「良いじゃん」って言ってくれることのほうが多くて。みんな、やさしい?と思ってます(笑)。
EMTG:結局、「セルアウト禅問答」でも迎合したつもりだけど、《偏見だ キモイだ ふざけんじゃねえよ》とか、下川的要素はどうしようもなく残っちゃってるしね。
下川:だからアングラ/サブカルは呪いみたいなもので、僕の中から一生消えないと思ったんです。僕が目指すところは、完全にみんなが聴けるアングラ/サブカル。それはもはや、アングラ/サブカルじゃないんですけど。そういう不可能じゃないかっていうものを作ってるほうが楽しいんですよ。それに夢がある。じゃないと、もう僕は生きていけないんです。夢を食う妖怪みたいなもんですよ。生きる原動力というか。だから、アングラ/サブカルバンドとして、挫・人間はいつか「Mステ」にも出たいと思ってます。

【取材・文:秦理絵】




<挫・人間 PV>
「可愛い転校生に告白されて付き合おうと思ったら彼女はなんと狐娘だったので人間のぼくかが幸せについて本気出して考えてみた」
https://www.youtube.com/watch?v=dcJGK3uRJQw
「セルアウト禅問答」
https://www.youtube.com/watch?v=eZ4JJc7ak5U
「下川最強伝説」
https://www.youtube.com/watch?v=lmHnkaswArg

tag一覧 アルバム 男性ボーカル 挫・人間

リリース情報

Now & Then

Now & Then

発売日: 2019年02月06日

価格: ¥ 2,800(本体)+税

レーベル: ユニバーサルミュージック

収録曲

01. The Everglow
02. Dance With Me
03. Used To Be
04. Clock
05. 歓びの陽
06. Set a Fire
07. ミッドナイトワゴン
08. Upside Down
09. 月は美しく(Album ver.)
10. Sweet Sweet Magic
11. Stand By Me

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ビデオコメント

リリース情報

テレポート・ミュージック

テレポート・ミュージック

2015年08月26日

redrec / sputniklab inc.

1:念力が欲しい!!!!!~念力家族のテーマ
2:セルアウト禅問答
3: 土曜日の俺はちょっと違う(Memory Ver.)
4:オー!チャイナ!
5:可愛い転校生に告白されて付き合おうと思ったら彼女はなんと狐娘だったので人間のぼくが幸せについて本気出して考えてみた
6:十月の月
7:下川 VS 世間
8:もう四日もしてない
9:過呼吸です。
10:今までお世話になりました
11:ロンググッドバイ
12:下川最強伝説
13:お兄ちゃんだぁいすき

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お知らせ

■ライブ情報

インストアLIVE
(ミニLIVE &日本一キモいチェキ撮影会)
2015/08/27(土)タワーレコード渋谷店4Fイベントスペース *観覧自由

あなたの心にテレポート~アルバムの曲全部やるまで帰れま10~
2015/09/12(土)新宿レッドクロス

2nd Album「テレポート・ミュージック」発売記念TOUR
2015/10/25(日)名古屋 池下UP SET
2015/11/07(土)岡山 CRAZY MAMA2ndRoom
2015/11/08(日)福岡 Queblick

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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