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新曲「水無月」を披露!!宮崎の復興を願う秦 基博の自主企画ライブをレポート!!

秦 基博 | 2011.06.03

 九州有数のリゾート、宮崎県のシーガイアの野外に特設されたステージにさんさんと陽が降り注いでいる。昨年は長崎や奈良など、全国4ヵ所で展開された秦 基博のアコースティック・ライブ“GREEN MIND”は、今年は秦のベイスである宮崎のみでの開催だ。口蹄疫、火山の噴火、鳥インフルエンザなど、さまざまな困難が降りかかった宮崎に対して、秦が込める思いは格別のものがある。

 そんな思いを象徴するように、ライブは意外な曲から始まった。昨年、発表されて以来、秦の代表曲のひとつとなっている「アイ」のイントロがアコギで奏でられると、会場から温かい拍手が起こる。秦はすぐに歌い出した。それこそ本編の最後やアンコールで歌われる「アイ」がオープニングとは。秦の並々ならぬ気迫が伝わってくる。

 だが一方で、1曲目だけあって、さすがの秦も手探りで歌う部分があった。自分の喉や、PA、モニターの調子を確かめながら歌う秦。それを大事な「アイ」で行なうところに、秦の大物っぷりを感じて、嬉しい笑いがこみ上げる。おそらく「アイ」をオープニングに据えたセットリストは、今後二度とないだろう。秦の気迫と聴衆を楽しませたいという心意気を、噛みしめたのだった。

 「どうも、秦 基博です。晴れました。ありがとうございます(笑)。ゆったり楽しんでいって下さい」。会場から柔らかな笑いが起こる。前日は冷たい雨が降っていたから天候が心配されていたが、今日は雲ひとつない青空。“晴れ男”秦の面目躍如(めんぼくやくじょ)だ。

 アコースティック・ギターの弾き語りをテーマに掲げた“GREEN MIND”は、秦にとってもはやライフワークといっていい。一昨年の“GREEN MIND 09”はライブアルバム(※1)としてリリースされ、高い評価を得た。昨年の“GREEN MIND 10”も、ニューシングルの期間限定パッケージとして発表することが決まっている。そして2011年の“GREEN MIND”は秦の言葉通り、ゆったりと進んでいく。

 5曲目は、ニューシングルの「水無月」。♪単純な言葉で愛を 今歌おう♪という明るい歌詞が、青空に響く。今までになくストレートな言葉が、秦の現在の気持ちを表わしている。東日本と宮崎にとどまらず、今、日本全体に通底する痛みや悲しみに対する、“歌を越えた思い”が込められた歌だ。この新曲の披露は、オーディエンスへの大きなプレゼントであり、同時に秦の最新の心境報告として会場に真っ直ぐ受け止められていた。

 中盤はゲスト・ミュージシャン(※2)が登場。中でもピアノの島田昌典が素晴らしく、彼がソロを取った「朝が来る前に」はこの日のベストアクトとなった。ピアノの正式名称である“ピアノフォルテ”の名のとおり、小さな音から強い音までが活き活きと聴こえてくる演奏に、会場から大きな拍手が上がった。
 終盤は「シンクロ」「鱗(うろこ)」、そして「ドキュメンタリー」とビッグ・スケールの曲が続く。最終盤に来て、秦のボーカルはますます絶好調だ。表現者としての地力の凄さと、歌うことを本当に楽しんでいる秦の姿は、自然とオーディエンスの心を和ませ、励ましていたのだった。

 アンコールの前には、「水無月」のPV撮影が行なわれた。あのシンプルで力強いサビを全員で歌い、それを撮影しようというのだ。長い歌詞をその場で覚えてもらって、歌詞カードを見ないでみんなに歌ってもらおうという、正直、かなり難しい作業。ところがオーディエンスの方々は嬉々として参加。さすがに、秦のファンだ。収録は短時間で成功した。
 “いい思い出”という言葉がある。今年の“GREEN MIND”は、まさにそれだった。それこそこんな世相の中で、人間が残せる最上のものとは何か。そのひとつを経験したと思った。
その夜、雨が降り、翌日は分厚い曇り空。奇跡の一日の出来事だった。

(※1)21箇所に及んだツアー「GREEN MIND 2009」の各会場のベストトラックを主体に、「アイ」ほかスタジオ新録音源を収録。全曲弾き語りで構成された2枚組アルバム。2010年期間生産限定盤のため現在は生産終了となっている。
(※2)ゲストミュージシャンは島田昌典(Pf)のほか、久保田光太郎(G)、正木健一(Per)が参加。

【取材・文 平山雄一】

tag一覧 秦 基博

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リリース情報

Documentary

Documentary

2010年10月06日

BMG JAPAN Inc.

1. ドキュメンタリー
2. アイ
3. SEA
4. oppo
5. サルみたいにキスをする
6. Halation
7. 透明だった世界
8. 今日もきっと
9. パレードパレード
10. 朝が来る前に
11. Selva
12. アゼリアと放課後
13. メトロ・フィルム(Album ver.)

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セットリスト

  1. アイ
  2. やわらかな午後に遅い朝食を
  3. oppo
  4. 虹が消えた日
  5. 水無月※新曲
  6. 青い蝶
  7. 朝が来る前に
  8. Selva
  9. 今日もきっと
  10. SEA
  11. キミ、メグル、ボク
  12. プール
  13. 猿みたいにキスをする
  14. 色彩
  15. 赤が沈む
  16. フォーエバーソング
  17. シンクロ
  18. 鱗(うろこ)
  19. ドキュメンタリー
  20. Encore
  21. 水無月※PV撮影
  22. Enc1 風景
  23. Enc2 新しい歌

GREEN MIND 2011公演概要

HATA MOTOHIRO PRESENTS
AN ACOUSTIC LIVE:GREEN MIND 2011


【日程】
2011年5月4日(みどりの日/祝・水)

【会場名】
フェニックス・シーガイア・リゾート「イベントスクエア」

【ゲストミュージシャン】
島田昌典(Pf)、久保田光太郎(G)、正木健一(Per)

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