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秦 基博、歌と映像がコラボしたスペシャルなライヴで次の一歩を踏み出す

秦 基博 | 2014.01.16

 これまでの活動の集大成とも言える、あの『Signed POP』という最高のアルバム以降、秦 基博が次の一歩をどう踏み出すのか、それをいまかと待つ者のひとりとして、この日のスペシャルなライヴに立ち会えたことはとても意味のあるものだった。ひとまずは『Signed POP』の完結編。これをもって、秦は本当に次の一歩を踏み出していく。

 2013年の最後に神戸と横浜の4公演のみ行われた「Hata Motohiro Visionary live 2013 -historia-」は、これまで「朝が来る前に」など、秦 基博のミュージックビデオを手がけてきた、映像作家・島田大介とのコラボレーションライブ。会場に入ると、ステージには、風車や小さな舞台のような小屋、灯篭のオブジェが置かれている。ここまで大掛かりな舞台装置は秦のライヴでは初めてだと思う。

 開演時間。カメラマンに扮した演者がステージに現れて、パシャリと4回目のシャッター音と同時に、ステージには秦が立っていた。まずは「Hello to you」の弾き語りから始まる。シーンと静まりかえった会場では、息遣いまで聞こえてくる。「やわらかい午後に遅い朝食を」では、力強い歌声が響き渡るなか、徐々にバンドメンバーのサウンドが加わり、同時に無色だったステージのオブジェに輪郭が縁どられ、色がついて、風景が鮮明になっていった。プロジェクション・マッピングを駆使したそれは想像以上の美しさで、オープニングから耳と目を奪われてしまった。

 ドラムの軽快なリズムをバックにのせて、「“Visionary live 2013 -historia-”へようこそ!」という秦の声を合図に、それまでじっと座って聴き入っていたお客さんが一気に総立ちになった。ゆるいクラップのなか、「今日もきっと」。鹿島達也が刻むウッドベースと河村”カースケ”智康の激しいドラムプレイが、秦の音楽をいっそう強く、たくましいものにしていく。
 なかでも「青い蝶」では、豊かなヴォーカルの表情がとても印象的だった。歌をしっかりと伝えることを主軸にした『Signed POP』という作品は、初期の曲にも大きな進化をもたらしている。

 「今日はいつもと違うライヴですけど、楽しんでいただけたらと思います」。そう言って、続いた「初恋」では皆川真人のキーボードと秦の歌を中心に大人の雰囲気で描く“初恋”の世界が広がった。さらに、「アゼリアと放課後」といった“僕と君”の物語が続く。「Girl」では、ステージ上のオブジェのひとつである小さな舞台小屋に、愛らしく飛び跳ねるバレーリナらしき少女の影が映し出された。少女は小さな舞台を飛び出して、ステージ上を自由にくるくると踊り続ける。これも最新の映像技術・プロジェクション・マッピングによるものだ。

 このあたりで、もしかしてこの日のセットリストのテーマは“人生”かもしれないと思った。さしずめ、ここは学生時代、青春時代のターム。ひとりの人生の1ページ1ページを切り取るような、味わい深い1曲1曲が続く。そう思いながら聴く「メトロ・フィルム」は、ライヴならでは開放感のあるアウトロと夕焼け色に染めたスクリーンの力も相まって、いつも以上に郷愁を誘うものだった。

 MCではパシフィコ横浜でのワンマンが初めてであること、かつてこの会場でジェイムス・テイラーとキャロル・キングのライヴを見たことを告げる。「(ステージでの)ジェイムス・テイラーの落ち着きっぷりは、自宅にいる様な感じで(笑)。でもそんな風に歌うのは理想です」と、秦。
 そして、すでにこの日のライヴでも何度か登場しているプロジェクション・マッピングの技術について説明。秦が「パリンッ!」と言うと、ステージ全体がガラスのように割れる演出を見せたりして、お客さんとコミュニケーションを楽しんでいた。

 ライヴ中盤、ここからは一切MCを挟まずにライヴは進んでいく。灯篭のオブジェにストーリーを映し出した「Dear Mr. Tomorrow」を筆頭に、スクリーンに花びらのように赤を散らした「Lily」、ステージ一面に星空や雨粒を映し出した「dot」、照明と光の機微で見事に雨上がりの空気を演出した「言ノ葉」など、映像が音楽に寄り添いながら、自然なかたちで調和していく。

 じっと聞き入る楽曲を続いたところで、「ヨコハマー!」という声を皮切りに、お客さんも手拍子で参加できる強力なポップチューンへ。「花咲きポプラ」では珍しく秦はハンドマイクでステージ前方まで来てお客さんを煽ると、会場からは大きな歓声が起こった。さっきまで風車だったオブジェが観覧車に、灯篭がメリーゴーランドに変わって、ステージ上が遊園地へと変貌した「パレードパレード」では、秦がエレキギターに持ち替えて、王道をハズしたユニークな名曲で会場を盛り上げた。

 終盤に圧巻の演奏を聴かせたのが「自画像」だ。《愛なんてない 愛なんてない》と繰り返し、《所詮 歌は歌だよ》と言い切る剥き出しの本性と狂気を、長い長いバンドセッションで表現。真っ赤に燃えるステージの上で、それぞれの楽器隊が互いの顔を見合わせながら、緊張感を極限ギリギリまで高めたところで、演奏を終えた。一瞬の静寂の後に起きた歓声は、この日一番の大きさだった。

 間髪おかずに「綴る」へ。人生の終わりにしたためた遺書のような歌を、万華鏡のような映像とともに届ける。秦の歌も先ほどの鬼気迫るものとは一転、穏やかだ。同時に、冒頭に登場したカメラマンと、少女のはずだったバレリーナは大人の姿になって登場。それは、この日のライヴで描いてきた“人生”あるいは“成長”の物語の幕引きのようで、ある意味、この曲が本編の最後にも思えた。

   最後のMCでは『Signed POP』のリリースからはじまった2013年をふり返った秦。「今年、開催した『Signed POP』ツアーのひとつの答え、さらにその先に何かができたらいいなと思って、Visionary liveをやってみました」。
 まったく新しい表現方法へのトライアルと、それでも変わらずに残して置きたい歌のあり方、それらを融合するこの企画は、GREEN MINDと並んで、もしかしたら今後も秦の活動の大切な要素として存在し続けるのかもしれない。
 そんな予感を抱きつつ聴いたラストナンバー「風景」の演出と演奏は、歌が素朴に伝わってくる、とてもシンプルなものだった。

【取材・文:秦理絵】
【撮影:杉田 真】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 秦 基博

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リリース情報

ひとみみぼれ(初回生産限定盤 CD+Bonus CD)

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2013年10月16日

アリオラジャパン

1.Girl
2.月に向かって打て
3.トラノコ
4.今日もきっと
5.SEA
6.My Sole, My Soul
7.花咲きポプラ
8.Honey Trap
9.色彩
10.風景
11.プール
12.dot
13.やわらかな午後に遅い朝食を
14.スプリングハズカム
15.アイ-弾き語りVersion-
16.鱗(うろこ)-弾き語りVersion-

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セットリスト

HATA MOTOHIRO Visionary live 2013 - historia -
2013.12.17@パシフィコ横浜

  1. Hello to you
  2. やわらかな午後に遅い朝食を
  3. 今日もきっと
  4. 青い蝶
  5. 初恋
  6. アゼリアと放課後
  7. Girl
  8. メトロ・フィルム
  9. Dear Mr.Tomorrow
  10. Lily
  11. dot
  12. 言ノ葉
  13. グッバイ・アイザック
  14. 花咲きポプラ
  15. パレードパレード
  16. スプリングハズカム
  17. 自画像
  18. 綴る
  19. 風景
Encore
  1. アイ
  2. ドキュメンタリー

お知らせ

■ライブ情報

Hata Motohiro presents an acoustic live “GREEN MIND 2014”
2014/04/30(水)フェスティバルホール
2014/05/01(木)フェスティバルホール
2014/05/04(日・祝)横須賀芸術劇場
2014/05/06(火・祝)サンポートホール高松
2014/05/11(日)札幌市民ホール
2014/05/15(木)福岡市民会館
2014/05/17(土)広島 上野学園ホール(旧ALSOKホール)
2014/05/23(金)秋田市文化会館 大ホール
2014/05/25(日)市民会館崇城大学ホール(熊本市民会館)
2014/05/30(金)東京エレクトロンホール宮城
2014/05/31(土)新潟県民会館
2014/06/04(水)大宮ソニックシティ
2014/06/08(日)名古屋国際会議場 センチュリーホール
2014/06/11(水)NHKホール
2014/06/12(木)NHKホール
2014/06/18(水)フェスティバルホール
2014/06/19(木)フェスティバルホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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