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2011年10月から全国ツアーを展開した吉川晃司。そのファイナルライヴをレポート!

吉川晃司 | 2012.01.18

 ダイナミックで重圧なバンド・サウンド。キャッチーなシンセピアノのフレーズが響く。ステージでは、フラッシュライトが明滅する。ステージ中央から、吉川晃司が姿を表す。満員の観客から、雄叫びのような歓声があがる。シルエットがステージ中央に歩み出してくる。ゆっくり両足でステップを踏むようにリズムをとりながら、吉川晃司が、堂々と歌いだしたーー「1990」。
 オープニングを飾ったのは、2011年の再結成も記憶に新しいCOMPLEXの曲だった。続いて、その分厚い胸板と肩を、左右交互に前に出すようにリズムをとりながら「RAMBLING MAN」。同じくCOMPLEXの曲。本来であれば布袋氏が歌う掛け合いのようなコーラス部分で、客席にマイクを向ける吉川。観客はどんぴしゃのタイミングで ♪ランブリングマン ♪とレスポンス。ステージバックのライティング・ボード に、一文字ずつ英語でタイトルが躍った「IMAGINE HEROS」。イントロ、そのギターのワンフレーズだけで、既にレッドゾーンにあった観客のテンションのメーターを振り切り「恋をとめないで」。エンディングのサビでは、歌詞を変え ♪ ファイナルの夜さ~ ♪ と歌い、オーディエンスの熱狂に追い風を送り、最後には、ダイナミックにシンバルキック。着地後のターンまで見事に決まった。

 オープニングから立て続けに4曲。
長い肢体で何度も宙を切りながら、時には堂々と、時には激しく、時には満員の観客にマイクを向け大合唱させながら、吉川晃司は、COMPLEXの楽曲をノンストップで畳みかけた。
この度肝を抜くオープニングには、吉川晃司の意志が込められていたように思う。COMPLEX再結成は、東日本大震災の復興支援を目的に行われた。その時に掲げられた言葉が「日本一心」。この言葉を再びツアータイトルに掲げた本ツアー。2011年夏の東京ドームを思い出させるような、大胆なセットリストのオープニング、そしてそのツアータイトルには、吉川晃司の意志が表れていたように思うーー「KEEP ON KICKIN’& SINGIN’~日本一心~」 。歌い続けて行く事。それが、 自分ができる事だ、自分がやるべき事だという吉川晃司の想いが、しょっぱなからストレートに空間に放たれたように思った。 吉川晃司、本気のストレートは、満員の観客の心に、オープニングからズシンと響いたのではあるまいか。
中盤前半。アコギを手にし、柔らかいオレンジの光の中、ミディアムバラード「終わらないSunset」。続けてスケール感あるバラード「INNOCENT SKY 2011」では、背中をのけぞらせてシャウトする。バンドのキーボードと吉川だけにスポットがあたり「Cloudy Heart」と、バラード3曲を持ち前の声量で、じっくりと聴かせた。ちなみに、3曲もバラードが続くというパターンは、吉川晃司のライヴでは非常に珍しい。しかも、すべて空をテーマにしたバラード。すごく印象に残ったし、自分の中で、過去と今、そして未来へのイマジネーションが、どんどん広がる時間だった。
ライヴは後半へ向かう。吉川のアクションに合わせて、会場中で小気味よくクラップが鳴り響いた、ダンサブルなナンバー「サバンナの夜」が終わるとMC。メンバー紹介の後、吉川は、突然こんな言葉を口にした。

「客席をよく見たいから(自分に当たっている)ピン(=ピンスポット)ちょっとどけてみて」
 消えるピンスポット。そして、うっすらと明るくなる客席。「おー、よく見える」と笑顔で、吉川はこう締めくくった。
「今年(=2011年)のいろんなものを吐き出して、来年(=2012年)は、世界中の皆が幸せになるんだ、と。だから全部出し切って、置いてってくれ!」

 そして「LA VIE EN ROSE 2011」へ。1984年。吉川晃司デビュー年に発売された、3枚目のシングルである。オリジナルは、AORティスト&クールさもあるミディアムチューンだったが、この日は、ストレートなアップチューンで披露。しかしながら、この曲のひとつの特徴であったロマンチックなピアノのフレーズを、音色も当時のままに残すという、マニアが喜びそうなサービス精神(?)もチラリ。ディープでハードなスピードナンバー「Fame & Money 」では、低音から高音まで一気に駆け上がり、ボーカリストとしてのスキルをみせる。エンディング。天に向かってパンチを繰り返すアクションに、観客も一緒に拳を突き上げる。曲が終わるとギターをかけ「The Gundogs」へ。長い腕で、がっしがしギターを弾きながら吠える吉川。曲の途中で、本人が自分の右手を大きく開き、耳の後ろに持ってくる。いわゆる“もっと声を聴かせて(吉川風に言えば聴かせろ?)”のジェスチャー。その仕草に、観客が一斉に歌声でレスポンスする。この瞬発力。ステージ上での吉川晃司の瞬発力もさすがだが、そこにライドオンする観客の瞬発力もお見事。ステージと観客の呼吸がぴったりと合わさり、ライヴのエンディングへ向け、会場のテンションが猛スピードで転がって行く。本編最後。キャノン砲が、色とりどりのメタリックカラーテープを放つ。エレクトリックでブライトなディスコ・チューン「Juicy Jungle」 。多色のライティングが、ステージを、そして会場をカラフルに染める。曲の途中、小さく丸めたTシャツを、何回も客席に放り投げる吉川。スタンド席まで届けようと大きく振りかぶったその姿に、スタンドの観客が大きく手を振る。スタンドやアリーナ後方を目がけての遠投を何回か続けた後、最後のひとつは、少し結び目を緩くし、あまり遠くに飛ばないようにして客席に放った吉川晃司。最後の一投は、弧を描く前に空中で綺麗にほどけ、ひらひらとアリーナ前方の観客の頭上に降っていった。

 アンコール。大歓声に迎えられ再びステージに登場した吉川晃司は、その想いを言葉にした。

「今年、我々は、人として生きるという事の根源的な部分を問われる1年になったなと思っています。物質よりも、愛情や絆が大切だということを感じた人も、たくさんいたと思う、特に自分は、そういうところがこれまで欠落していたから、すごく大きな事だと思って。なんかね……びっくりするかもしれないけど、愛だろ、愛だろって言い続けてきた1年間だったと思います。だから、少々間違えても、動くべきかなと思って動きました。COMPLEXから開始して、この年末までの間に、何かわかるかなと思ったんだけど、正直、わからない部分もあります。(日本一心という)ものすごいでかいモノを掲げちゃったから、その旗がずっと背中に刺さってるような感じで、立ち止まるのが怖かったというのも、正直あるかもしれない……なんだかぐだぐだになっちゃったけど、そういう事です」

 正直に綴られた言葉に、観客からは大きな拍手。そして「ファイナルなんで1曲、違うのをやります」とアンコールを1曲披露した後、最後の曲をこう紹介した。

「このツアーのサブテーマなんで……最後はこの歌で終わらせてください」
 「あの夏を忘れない」。吉川の母校である広島県府中町立府中小学校。その生徒の夢「被爆者に、原爆の様子を聞いて、それを元に、作曲家と一緒に歌を作って、歌いたい」を実現するために、依頼され曲を手掛けた吉川晃司。2010年、日本テレビの24時間テレビでもその様子が紹介された。レコーディングされた子供達の声と、吉川晃司の力強い声が重なっていく。客席には、大声で一緒に歌っている観客の姿もあった。
 曲が終わり、明るくなる会場。ステージをゆっくりと横断し、客席をしっかりと見据え、アイコンタクトし、最後には、頭上で拍手しながら、吉川晃司はステージを後にした。

 

【取材・文:伊藤亜希】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 吉川晃司

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リリース情報

KEEP ON SINGIN’!!!!! ~日本一心~ (初回限定盤)

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2010年09月21日

ファー・イースタン・トライブ・レコーズ

ディスク:1
1. ジェラシーを微笑みにかえて (Live ver.) (初収録ライブテイク)
2. RAIN-DANCEがきこえる 2011 (リレコーディング)
3. 1990 (リレコーディング)
4. RAMBLING MAN (リレコーディング)
5. 恋をとめないで (Live ver.) (初収録ライブテイク)
6. MODERN VISION 2007
7. INNOCENT SKY 2011 (リレコーディング)
8. Cloudy Heart
9. LA VIE EN ROSE 2011 (リレコーディング)
10. パンドーラ
11. IMAGINE HEROES (リレコーディング)
12. TOKYO CIRCUS
13. にくまれそうなNEWフェイス (Live ver.) (初収録ライブテイク)
14. TARZAN
15. 光と影 (Original ver.)
16. ONE WORLD 2011 (リレコーディング)
ディスク:2
1. あの夏を忘れない
2. あの夏を忘れない (夢配達人プロジェクト(広島県府中町立府中小学校)の子どもたち ver.)
ディスク:3
1. あの夏を忘れない (MUSIC VIDEO)
2. あの夏を忘れない (ドキュメンタリー映像)

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セットリスト

  1. 1990
  2. RAMBLING MAN
  3. IMAGINE HEROES
  4. 恋をとめないで
  5. VENUS~迷子の未来
  6. RAIN-DANCEがきこえる
  7. ジェラシーを微笑みにかえて
  8. 終わらないSun Set
  9. INNOCENT SKY 2011
  10. Cloudy Heart
  11. Black Corvette ’98
  12. MODERN VISION 2007
  13. TARZAN
  14. サバンナの夜
  15. LA VIE EN ROSE 2011
  16. SPEED
  17. Mr. Body & Soul
  18. Fame & Money
  19. The Gundogs
  20. Juicy Jungle
  21. NO NOサーキュレーション
  22. あの夏を忘れない

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